理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 612
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物理療法
人工炭酸泉浴による血管内皮増殖因子と乳酸脱水素酵素変動に関する検討
*野中 紘士秋山 純一中嶋 正明龍田 尚美祢屋 俊昭
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抄録
【目的】近年、人工炭酸泉浴は褥創や閉塞性動脈疾患などの虚血性疾患に対する治療効果が報告されている。虚血による組織の酸素供給低下により、組織へのエネルギー供給システムが解糖系に移行することが報告されている。また、低酸素状態により血管新生因子の1つである血管内皮増殖因子(VEGF)の増加し、側副血管路を形成し血流改善が起こることが報告されている。
 人工炭酸泉浴は虚血性疾患に対する治療効果から、血管新生によりエネルギー供給システムに影響を及ぼすと考えられる。今回、我々は人工炭酸泉浴による血管新生因子の1つであるVEGFおよび解糖系酵素の1つである(乳酸脱水素酵素)LDH活性を測定し、人工炭酸泉浴の生体反応について検討した。

【方法】8週令のC57BL/6J雄性マウスをコントロール群、さら湯群、炭酸泉群に分けた。さら湯群、炭酸泉群は水温38°Cで、1日2回、1回につき60分の入浴が3週間行われた。3週間の入浴終了後、各々の群のマウスエーテル麻酔下にて血液を採取し、屠殺した後、速やかに腓腹筋を摘出た。採取した血液は遠心分離し、得られた血清をVEGF測定に用いた。採取した腓腹筋は緩衝液を加え、ホモジネートした後、遠心分離し、得られた上清によりLDH活性を測定した。

【結果】血清のVEGFはコントロール群で53.0±16.2pg/ml、さら湯群で46.6±7.0pg/ml、炭酸泉群43.6±9.0pg/mlであった。コントロール群と比べ、さら湯群、炭酸泉群で低下傾向であった。LDH活性はコントロール群で5.7±0.5IU/mg、さら湯群で5.8±0.8IU/mg、炭酸泉群で5.2±0.2IU/mgであった。コントロール群、さら湯群と比べ炭酸泉群で低下傾向であった。

【考察】今回の結果から、さら湯、炭酸泉浴ともにVEGFの低下を示した。これは入浴により、血管拡張、および血流量増加の結果、組織への酸素供給が増加したためと考えられる。一方、LDH活性はコントロール群に比べさら湯群では著名な変化は見られないが、炭酸泉群では低下する傾向にあった。炭酸泉は温浴に比べ、組織の酸素分圧上昇が著明に現れると報告されている。このことから、炭酸泉による組織酸素分圧の上昇により、エネルギー供給システムに変化が現れたと考えられる。このエネルギー供給システムの変化はVEGFの減少より、血管新生には依存しておらず、人工炭酸泉による組織酸素分圧上昇が主体と考えられる。またLDHは乳酸を産生する酵素であり、人工炭酸泉によるLDH活性の低下は乳酸産生を抑制する効果があることが示唆された。
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© 2005 日本理学療法士協会
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