理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 721
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理学療法基礎系
平地とトレッドミル上の快適歩行における歩行速度と活動量との関係
*齋藤 信夫武井 圭一
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抄録
【目的】
 従来から平地での快適速度よりトレッドミルの快適速度は大変遅くなり,トレッドミルの方が速い速度で歩いている感じがすることになると報告されている.そこで今回は,快適速度における速度と力学的活動量の相違について,平地とトレッドミル上の歩行で比較検討した
【方法】
 対象は若年健康者の12名(男性10名,女性2名),年齢は21~38(平均22.6)歳.平地快適速度は10mの歩行時間を測定し求めた.トレッドミル(酒井医療社製SPR-7050)上快適速度は速度を上昇させながら快適速度まで測定したものと,速い速度から下降させながら快適速度を測定する2種類の計測を行った.各測定の際,腰背部に装着した小型3軸加速度変換器(KYOWA社製AS-TG)から動ひずみ測定器(KYOWA社製DPM-700B)を経てADコンバータを介しパソコンソフト(ADInstruments社製PowerLabシステム8)上で快適歩行時の3次元の加速度変化を解析した.5秒間の加速度変化の積分値(総力積)を求め活動量の指標にした.この測定法は,歩行時の総力積が酸素消費量と高い相関関係(r=0.958)にあることに基づいている.各条件の比較には1元配置の分散分析(反復測定)を用い有意差を求めた. 
【結果】
 平地快適歩行速度の平均値は5.06±0.70[km/h],トレッドミル速度上昇時快適速度の平均値4.38±0.45[km/h],速度下降時快適速度の平均値は4.30±0.31[km/h]であり,平地快適速度がトレッドミル快適速度に比べ有意に高いことが示された.平地快適歩行活動量の平均値は380.90±55.76 [N・min/kg],トレッドミル速度上昇時快適歩行活動量の平均値は282.26±50.23[N・min/kg],速度下降時快適歩行活動量の平均値は279.86±54.42 [N・min/kg]となり,平地快適歩行時の活動量がトレッドミル快適歩行時の活動量に比べ有意に高いことが示された.
【考察】
 平地快適速度に比べトレッドミル快適速度は遅くなるという従来からの報告と同様の結果が得られ主観的な速度の相違に由来するものと考えられた.エネルギー消費の視点からは,平地歩行とトレッドミル歩行の同一速度におけるエネルギー消費はトレッドミル歩行が高くなると報告されている.今回,快適速度という主観的速度下での比較を行い,トレッドミル歩行では速度が遅くなるため,エネルギー消費は下がるのではないかという考えが示唆された.
【まとめ】
 若年健康者の平地とトレッドミル上での歩行速度と活動量について,快適歩行速度における変化を測定した.快適歩行時の速度と活動量の値は,平地歩行のほうがトレッドミル歩行より高くなることが示唆された.
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© 2006 日本理学療法士協会
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