理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 71
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神経系理学療法
くも膜下出血患者の脳槽洗浄施行期間中での下肢周径の変化
*藤野 雄次小澤 亜紀子竹内 朋代浦川 宰花房 祐輔秦 和文小峰 美仁佐藤 章間嶋 満
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抄録
【はじめに】脳血管障害の急性期リハビリテーションは、在院日数の短縮化や機能的予後の更なる改善をもたらすとされている。しかし、急性期では原疾患に対する治療のため身体活動が制限される場合もある。そのような例として、くも膜下出血(以下、SAH)の術後に遅発性脳血管攣縮の予防として行われる脳槽洗浄が挙げられる。脳槽洗浄期間中は身体活動が制限されているが、この期間の下肢筋萎縮に関する報告はない。本研究の目的は、脳槽洗浄前後での下肢周径の変化を調べ、脳槽洗浄が下肢の筋萎縮に及ぼす影響を検討することである。

【対象】SAH術後、脳槽洗浄を施行され、下肢の浮腫および運動麻痺を認めない患者6名(60.8±12.7歳、男3名・女3名)。Hunt&Kosnik分類にてGradeI:4名・GradeII:1名・GradeIV:1名であり、入院時意識レベルは全例JCSI桁であった。

【方法】左右の膝蓋骨上縁、上縁から5cm上、10cm上、15cm上での周径ならびに下腿部最大周径を同一検者が脳槽洗浄開始日、開始後1週間、脳槽洗浄終了日に計測した。統計学的検討は一元配置分散分析、多重比較を用い、有意水準は5%未満とした。尚、下肢周径の変化には右下肢の値を用いて検討した。

【結果】開頭手術の実施は発症から2.2±1.2日、脳槽洗浄開始は発症から3.0±1.1日、脳槽洗浄終了日は発症から13.8±2.9日(脳槽洗浄期間は12.0±2.8日)であった。理学療法の開始は発症から3.5±1.1日であり、理学療法の内容としては徒手的な筋力強化を行った。脳槽洗浄開始日と脳槽洗浄開始後1週間の各部位の周径は有意に減少していた(p<0.01)。しかし、脳槽洗浄開始後1週間と脳槽洗浄終了日の周径は各部位とも有意な差は認めなかった。

【考察】一般に、筋萎縮は不活動にさらされた初期の1週間に最も大きな割合で生じるとされる。今回の結果では、約2週間に亘って行われる脳槽洗浄開始から1週間において有意な下肢の周径の減少を認めており、筋萎縮と身体の不活動との関連が示唆された。今回対象例全例に対し、ベッド上での下肢筋力強化を施行していたが、脳槽洗浄に伴う不活動によって生じると思われる下肢の筋萎縮の予防とはならなかった。このため、脳槽洗浄期間中の下肢筋萎縮の新たな予防法の検討が必要であることが示された。
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© 2006 日本理学療法士協会
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