理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 184
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骨・関節系理学療法
股関節外転筋力強化訓練において挙上下肢の股関節屈曲角度の違いが中殿筋、大腿筋膜張筋の筋活動に及ぼす影響
筋電図学的評価
*菅原 由美子木本 裕子墓下 仁志古江 匡季子中嶋 正明
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抄録
【目的】臨床現場において,患者が股関節外転筋の筋力強化訓練として側臥位で下肢外転挙上運動を行う際,挙上下肢股関節が屈曲肢位となっているのをしばしば目にする。本研究の目的は側臥位での下肢外転挙上運動において股関節屈曲肢位が中殿筋や大腿筋膜張筋の股関節外転筋の筋活動にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることとし,筋電図学的に評価を行った。

【方法】対象は平均的体格の健常成人男性6名,女性6名(平均年齢21.1±1.1歳)とした。課題動作として被験者には左側臥位で股関節屈曲角度を伸展10°,屈曲0°,10°,20°,40°,60°(側臥位)にて右股関節外転位に保持させ外転筋の等尺性収縮を行わせた。この際,筋電計 Nicolet Viking 4(Nicolet Biomedical Inc., USA)にて表面筋電図を中殿筋,大腿筋膜張筋から表面双極誘電法にて導出した。サンプリング周波数は20kHzとし,低域フィルター20Hz,高域フィルター10kHzに設定した。等尺性筋収縮は5秒間行い,各筋から導出した筋電位は整流平滑化処理を行った後,波形の安定した中間の4秒間について積分し IEMG (Integrated EMG)とした。これに先立ち同様に各筋の最大随意等尺性収縮(maximum voluntary isometric contraction, MVIC)による4秒間のIEMGを求め,課題における各筋のIEMG値をMVICによるIEMGで正規化した(%MVIC)。 そして各筋の各課題動作における%MVICについて比較した。

【結果】中殿筋の%MVICは,股関節屈曲60°において伸展10°および屈曲0°に対して有意に減少した。大腿筋膜張筋の%MVICは,股関節屈曲角度の変化による変化が認められなかった。また,股関節屈曲60°の時,中殿筋と大腿筋膜張筋の%MVICに有意差が認められた。

【考察】今回の我々の研究では2つのことが明らかとなった。第1は,股関節屈曲角度が60°になると中殿筋の筋活動が股関節屈曲角度0°に比べ有意に減少することである。この時,中殿筋は股関節屈曲角度の増加に伴って筋活動が序々に減少するのではなく,屈曲40°以下の場合は変化がなかった。第2は,大腿筋膜張筋の筋活動は股関節屈曲角度の違いによって影響をうけないことである。これらのことから階段昇降時など股関節屈曲位での外転筋力発揮の場面では中殿筋の活動が抑制されるため大腿筋膜張筋の筋力が重要な役割を演ずることがわかる。我々は股関節外転筋力の評価を,股関節屈曲0°における外転筋力の評価,歩行時の動作分析で満足してしまいがちであるが,本研究により,股関節屈曲位での股関節外転筋力の評価および大腿筋膜張筋の役割の重要性をあらためて認識させられた。
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© 2006 日本理学療法士協会
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