理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 183
会議情報

骨・関節系理学療法
膝屈伸筋力に股関節外旋の等尺性筋収縮が及ぼす影響
*山﨑 敦原 洋也久保下 亮
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】我々は,低負荷での股関節外旋運動後に片脚立位時の重心動揺が減少することを確認し,第40回日本理学療法学術大会において報告した。今回の研究では,徒手抵抗による股関節の等尺性外旋運動を行うことが,より末梢に位置する膝関節のトルクにどのような影響を及ぼすのかについての検討を行ったので報告する。
【対象と方法】対象は健常成人16名(男性8名,女性8名)で,平均年齢24.6歳,平均身長166.7cm,平均体重60.4kgであった。膝屈伸筋力の測定にはBIODEX system2を使用し,角速度120°/secの求心性等速運動を利き足で5回行わせた。計測時には体幹・大腿固定ベルトでシートに固定し,両腕は体幹前面で組ませておいた。計測後には,大腿固定ベルトと下腿遠位部の固定パッドを外して,休息を十分にとらせた。その後,座位における股関節外旋の等尺性収縮(エクササイズ)を行わせた。エクササイズ時には,体幹が背もたれから離れないようにし,股屈曲90°・内外転中間位,膝関節90°屈曲位を保持したままで,随意最大等尺性運動を命じた。検者は内果直上において徒手抵抗を加え,3秒ずつの運動・休息パターンを5回施行した。この際,股関節外転などの代償運動が出現しないように注意した。この直後に,エクササイズ前と同条件で膝屈伸筋力の測定を行った。ここで得られたデータから,最大トルク体重比率(%PT),最大仕事量体重比率(%MW),平均パワー体重比率(%AP)を算出した。検定には対応のあるt検定を用いた。
【結果】膝伸展において,%PTは186.1%から202.2%,%APは192.8%から215.0%と有意に増加していた(p<0.01)。また膝屈曲では,%PTは142.2%から157.7%,%APは159.5%から184.1%と有意に増加していた(p<0.01)。一方で%MWは,膝伸展で157.0%から170.4%,膝屈曲で134.6%から143.2%と増加していた(p<0.05)。
【考察】我々が行った先行研究では,500gという低負荷での股関節外旋運動により静的姿勢制御能力が向上することを確認した。このことは,筋長が短く深層に位置する股関節外旋筋群が,体幹と下肢のリンク作用の一端を担っていることを裏付けるものである。この結果を受けて行った今回の研究は,股関節外旋筋の活性化による膝屈伸筋力の変化をみることを目的にしたものであった。結果としては,膝伸展・屈曲とも有意に筋力が増加しており,中枢に位置する関節の安定化が末梢関節の筋出力に寄与することが伺える。すなわち,膝関節運動における動的固定作用が今回のエクササイズによって得られたものと考えられる。臨床的には,膝関節への運動療法に先行して股関節外旋筋群のエクササイズを行うことで,より高い治療効果が期待できる。
著者関連情報
© 2006 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top