抄録
【目的】地域リハビリテーション(以下、リハと略)支援センターは「地域リハ推進事業実施要綱(平成13年4月25日、老発第174号)」に基づき、都道府県が県内に1箇所設置することになっている。設置の目的は高齢者や障害者が住みなれた地域で自分らしく活き活きと暮らすため、ライフステージにあわせた適切なリハサービスが提供されるよう都道府県内リハ資源の研究開発、関係機関との調整、広域支援センターの支援を行うことである。当センターは2002年5月、県から地域リハ支援センターの指定を受け、活動を行っている。本研究は地域リハ支援センターの活動のうち、理学療法士が深く関わっているリハ専門相談の活動内容を紹介し、地域リハサービス提供機関が求めている支援の内容を明らかにすることである。
【方法】2003年4月から2005年3月までの2年間のリハ専門相談活動実績を基に後方視的に調査を行った。
【結果】リハ専門相談は高齢者・障害者が地域で安心して暮らしていけるよう地域のサービス提供機関に対してリハの立場から支援を行うことを目的としており、具体的には脳卒中、脊髄損傷、神経難病、脳外傷者などに対し身体機能の維持・向上、介護・介助方法の指導や福祉用具、住環境設備、福祉制度、社会資源の活用などの情報提供、技術支援を行っている。2003年4月~2005年3月の相談件数は386件であり、このうち、相談者宅を訪問した件数は112件であった。相談対象者の疾患は脳卒中151名、神経難病61名、脊髄損傷46名、小児脳損傷45名、成人脳損傷38名、その他58名(重複障害を含む)であった。相談内容はリハ訓練に関すること139件、医療に関すること72件、補装具に関すること69件、福祉用具に関すること69件、看護・介護方法に関すること63件、生活相談に関すること48件、社会資源利用に関すること46件、住宅改修に関すること38件、医療機関紹介に関すること18件、その他6件であった(重複回答あり)。
【考察】リハ専門相談の相談内容のうちリハ訓練に関することが24.5%、補装具、福祉用具、住宅改修に関することが合計31.0%であり、合わせると理学療法士が関わるべき相談は55.5%であった。このことはケアマネージャー等が身体機能障害の評価、ホームプログラム立案、福祉用具の選定、住宅改修の方法に困難を感じ、対応に難渋している結果と言える。地域において理学療法士のニーズが歴然として存在する証左である。
【まとめ】地域リハ支援センターにおけるリハ専門相談の実績を調査し、サービス提供機関が求めている支援内容を明らかにした。リハ訓練、福祉用具、住宅改修等に関する相談が多く、理学療法士が関わるべき分野であることが再確認された。