理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1019
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生活環境支援系理学療法
軽度要介護認定者の発生状況とその要因に関する地域特性調査
*小島 基永大渕 修一岡 浩一朗松本 侑子仲 貴子竹本 朋代西澤 哲新田 正典
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抄録
【目的】
現在、平成18年からの介護保険制度改正に向けて準備が進められている。第3期にあたる今回の事業計画では、軽度要介護認定者および、その予備群である虚弱高齢者を対象の中心とした介護予防に重点が置かれると同時に、その効果を見極めていくことが重要視されている。制度が大きく変わるこの時期に、現在の制度下における、要介護認定者出現に関係する要因を把握しておくことは、今後の介護予防事業の効果を把握するために、きわめて重要であると考えられる。そこで今回我々は、東京都の介護予防推進モデル地区重点支援事業の一環として、東京都内における、軽度要介護認定者(要支援・要介護1)の発生状況とその要因に関する地域特性を調査した。
【方法】
従属変数となる軽度要介護高齢者の発生状況は、全国の要介護出現率を標準とした標準化要介護高齢者出現比“(各地域・各要介護区分における高齢者の実数)÷(標準集団における当該要介護区分の出現率×当該地域の高齢者数)”の要支援と要介護1を合わせたもので表した(以下、要介護出現比)。また、東京都社会指標(以下、社会指標)の76項目と、介護保険サービス実施状況(以下、介護保険状況)の17項目(国保連データおよび東京都介護保険事業状況平成16年12月報)の各々について、主成分分析にて構造を調べた結果、社会指標では4因子、介護保険実施状況では2因子が抽出された。これに、郵送アンケートによる実施事業数調査(一次調査)ならびに、訪問聴取りによる事業内容調査(二次調査)にて把握した、各自治体における介護予防事業実施状況56項目を加えた、合計72の要因を独立変数となる地域特性とした。
【結果】
地域特性の各要因において、要介護出現比と比較的強い相関が認められたのは、社会指標から抽出された因子の1つである、勤労者一家の住む郊外度(r=-.67)、ならびに介護保険状況から抽出された因子の1つである、訪問入所介護サービス提供度(r=.68)、さらに介護予防事業実施状況の項目の1つである、老年症候群に対応したサービス数(=.47)であった(p<.01)。この3要因がどの程度、要介護出現比に独立して影響を与えているかを知るために、重回帰分析を行ったところ、訪問入所介護サービス提供度のみが有意に単独で影響を及ぼしていることが示され(p<.01、決定係数は.54)、寄与率は.326であった。
【考察】
今回の結果から、介護保険における訪問入所介護サービスを多く提供している地域では、軽度要介護認定者出現が高くなることがわかった。つまり、こうした訪問入所介護サービスを、通所・リハサービスにある程度切り替えることで、軽度要介護認定者の出現を抑制できる可能性が示唆された。また、今年度各自治体が取組みはじめたばかりの介護予防事業の効果は未だ現れておらず、継続的な調査を行う必要性が考えられた。
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© 2006 日本理学療法士協会
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