理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 472
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理学療法基礎系
マイクロCTを用いたサル腰椎椎体の海綿骨微細構造
椎体内の部位による違いの検討
*椿 淳裕高橋 榮明南郷 脩史山本 智章石川 知志黒川 幸雄
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抄録
【はじめに】骨折の予測において,骨強度の指標として,骨量の評価とともに骨の質の評価も重要となってきており,マイクロCTやマイクロMRIを用いた海綿骨微細構造の評価が骨質の評価の1つとして行われている.今回,腰椎椎体内の部位による海綿骨骨梁の微細構造の違いを明らかにする目的で,マイクロCTを用いて解析した.
【対象と方法】9歳雌のカニクイザル6匹を対象とした.30ヶ月の飼育の後,ペントバルビタールナトリウム(東京化成工業株式会社)水溶液(64.8mg/mL,0.4mL/kg)の前腕橈側皮静脈内投与による麻酔下で放血致死させ,第4腰椎を摘出した.摘出骨は70%エタノールで初期固定の後,樹脂包埋し,解析に用いた.第4腰椎の海綿骨微細構造は,マイクロCT(inspeXio,島津製作所)を用いて解析した.得られた断層データから三次元画像解析ソフト(TRI/3D-BON,ラトック・システム・エンジニアリング)を用いて海綿骨の三次元画像を作製した.また,海綿骨量(bone volume/tissue volume;BV/TV),骨梁厚(trabecular thickness;Tb.Th),骨梁数(trabecular number;Tb.N),骨梁間間隙(trabecular separation;Tb.Sp)の骨梁構造指標を算出し,部位での比較を行った.この際,骨の粗鬆化に伴う形態変化の記述に適しているとして南郷らが提唱した骨梁幅(trabecular width;Tb.W)も算出し,比較した.統計学的検討には一元配置分散分析を用い,p<0.05を有意とした.有意差を認めた場合には多重比較検定を行った.
【結果】二次元の画像を比較すると,上層および下層に比べ中層は海綿骨の骨梁が疎であった.部位ごと構造指標の平均値を算出し比較した結果,BV/TVは中層が上層および下層より有意に低値であった.Tb.Thは上・中・下層で有意差を認めなかったが,Tb.Nは中層が下層より有意に低く,Tb.SpおよびTb.Wは中層が上層および下層より有意に高値であった.代表的な三次元画像でTb.Th,Tb.Wを比較すると,Tb.Thは上部・中部・下部を通して一様であったが,Tb.Wは中層でばらつきが大きく多様であった.
【考察】中層でBV/TVが低値であり,Tb.Spが高値であったことから,中層は海綿骨量が少なく,骨梁間間隙が大きいことが推測できる.また中層ではTb.Wが高く,多様であったことから,中層は骨梁幅が広いと考えられる.腰椎の椎体内の部位による差は62歳ヒト剖検海綿骨においても報告されており,椎体内の海綿骨の構造は部位により異なることが考えられる.
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© 2007 日本理学療法士協会
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