理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 523
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理学療法基礎系
脳疾患患者における2ステップテストの有用性
*菅原 恭子小笹 佳史義澤 前子久保 祐子中島 美奈川口 聡小西 正浩迫 力太郎大野 範夫
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抄録

【目的】歩行能力に影響を与える要因には様々なものが含まれ,多くの報告がされているが,臨床の場面ではより簡便な評価法が望まれる。第38回理学療法学術大会において平野により報告された2ステップテストは簡便に歩行能力を推定するために考案され,10m歩行速度や6分間歩行距離と高い相関を示し,転倒の危険性や日常生活自立度を簡便に推測しうると示している。当院でも脳疾患患者の歩行能力の評価として2ステップテストを導入しており,脳疾患患者への評価においての有用性を歩行能力と経時的な歩行能力の推移から検討を行ったので報告する。
【対象】当院入院中の脳疾患患者215例(男性142名,女性73名,平均年齢64.15±12.45歳)内訳は脳血管障害197名,脳挫傷12名,脳腫瘍6名で発症から入院までの平均経過日数134.58日を対象とした。
【方法】2ステップテストはバランスを崩さず実施可能な最大2歩幅を測定。これを身長比で標準化した値を2ステップ値(以下2ステップ値)とした。被験者は通常使用している補助具を使用したまま測定。歩行能力は室内歩行監視(訓練室内などの限られた範囲内),屋内歩行監視,屋内歩行自立の3群に分類し2ステップ値の平均値より比較検討を行った。また経時的な歩行能力の推移と2ステップ値の関係を群別に初回の2ステップ値より比較検討した。2ステップテストは約4週に1回の頻度で測定した。歩行能力の推移における分類基準は監視から屋内歩行自立へ移行したケース(退院後に自立したものも含む)を自立移行群,自立へ移行できなかったケースを監視群とした。
【結果】歩行能力別にみた2ステップ値の平均値は,屋内歩行自立レベル1.10±0.28,屋内歩行監視レベル0.81±0.22,室内歩行監視レベル0.48±0.18であった。歩行能力の推移からみた初回2ステップ値の比較では,自立移行群では初回2ステップ値0.5以上の割合90.9%,監視群では初回2ステップ値0.5以上の割合37.7%であった。歩行能力の低下に伴い2ステップ値も低下しており,自立移行群では初回2ステップ値0.5以上の割合が高く,監視群では初回2ステップ値0.5未満の割合が高い傾向が認められた。
【考察】当院対象患者における歩行能力別にみた2ステップ値の結果では屋内歩行自立レベルにおいて2ステップ値1.0以上の割合が高く,2歩幅で身長を超えることができれば歩行自立度が高く脳疾患患者においても歩行能力の推定に有用性が高いことが示唆された。また,歩行能力の推移からみた2ステップ値の結果より,屋内歩行自立へ移行したケースの多くが初回2ステップ値0.5以上であり,0.5未満のケースは監視レベルに留まっている例が多く,2歩幅で身長の半分を超えられないケースは歩行自立へ移行しにくいことが示唆された。今回の結果より2ステップテストを歩行能力の指標および歩行獲得の予測にも活用していけるのではないかと考えている。

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© 2007 日本理学療法士協会
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