理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 524
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理学療法基礎系
動画を使用した片麻痺患者の歩行分析の効果
*伊藤 亜希子
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キーワード: 動画, 歩行分析, 情報共有
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抄録

【はじめに】片麻痺患者の歩行分析をする際、今までは理学療法士のみで分析し、訓練を行うことが多かった。今回患者の了承を得てデジタルカメラの動画を使用し、患者と理学療法士が一緒に歩行を分析し情報を共有した結果、患者自身の意欲の向上、訓練内容の意味を理解した上で効果的にリハビリテーションを実施することができたので報告する。
【方法】患者の歩行をデジタルカメラの動画で前後左右4方向から撮影し、パソコンを使用し患者と理学療法士が一緒に動画を見て異常歩行の原因を分析した。対象は片麻痺患者2名で1症例は左視床出血の50代男性で4点杖歩行開始直後の発症30日目、杖歩行監視の50日目と経過を追って、もう1症例は外傷性くも膜下出血の10代女性で発症6ヶ月目に撮影した。
【目的】患者の歩行を動画で撮影し、患者が見ることができない歩行を見て理学療法士と一緒に分析することで、異常歩行の原因を究明し歩容の改善を目指した。
【結果】50代男性の症例では発症30日目と50日目の動画を比較し麻痺の随意性向上やバランス能力向上、歩容改善など訓練の結果を経時的に見ることができた。10代女性の症例では装具を検討しており、患者の装具に対する抵抗が強かったが、装具を装着すると歩容が改善することを理解してもらえた。また患者の感想として、自分の歩行を視覚的に見ることで何に問題があるかということが理解でき訓練に対する意欲の向上につながった、想像以上に歩行が不安定であることがわかったなどが挙がった。
【考察】今まで患者の歩行分析に鏡を使用して視覚的フィードバックを行っていたが、歩行しながらかつ分析することは患者だけでなく理学療法士にとっても困難だった。加えて患者は正面からの歩容しか見られない為、患者の異常歩行の原因を多角的に分析できなかった。また理学療法士のみで分析することが多かった。今回動画を使用し片麻痺患者の歩行分析を行った利点として、簡単にパソコンに取り込め繰り返し見ることができる点や撮影時間が短いことで患者の負担も少なく集中できる点が挙げられる。今回は患者2名に対して患者と理学療法士が一緒に歩行分析を行い、視覚的に異常歩行の原因を理解することできた。また訓練の成果を実際に見ることで訓練に対する意欲の向上につながった。このような結果が得られた要因として比較的若い患者であったこと、高次脳機能障害があったが理解力がありコミュニケーションに問題がなかったことがいえる。
【まとめ】今回動画を使用し歩行分析を行った結果、予想以上に患者の反応がよく経時的に撮影し評価することで患者だけでなく理学療法士にとっても日頃の訓練の成果をみることができた。今後もリハビリの経過説明時に動画を利用するなど検討していきたいと思う。

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© 2007 日本理学療法士協会
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