理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 667
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理学療法基礎系
介護予防対象者の快適・最大歩行速度決定因子について
*多田 利信伊橋 光二原田 順二
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抄録

【目的】
患者・高齢者にとって歩行の持つ意味は大きく、歩行能力を維持することは大変重要である。しかし、高齢者の歩行速度決定因子に関する知見は少なく、明確なものがまだ無い。そこで、この研究の目的は高齢介護予防対象者の快適・最大歩行速度の決定に関する因子を多面的に調査し強く関係する要素を明らかにすることである。また歩行速度と生活活動度との関係についても調べ、介護予防をより効果的に実践出来る可能性を検討した。
【方法】
新介護予防事業に参加している地域在住の65歳以上の高齢者(22名)を対象とした。対象者は全員歩行補助具無し、あるいは一本杖を使用し11m以上実用歩行可能な者で、厚生労働省介護保険認定基準の要支援1及び2の該当者である。それぞれの疾患に一定の除外基準を設けた。通所リハビリテーション部門にて介護予防プログラム開始時に運動機能測定及び活動状況調査を実施した。プログラム開始時の歩行速度決定因子を分析し、更に生活活動度との関係も調べた。測定項目は歩行速度、歩幅、筋力(下肢6種と握力)、開眼片足立ち時間、重心動揺測定、関節可動域(股・膝伸展)、(棒落下)反応時間、ファンクショナルリーチ 、複合動作能力(Timed Up and Go test以下TUG)、生活活動度(老研式活動能力指標)、精神的因子(うつ尺度)、生活空間(Life-space Assessment )である。筋力はハンドヘルドダイナモメーターで測定した。なお、この研究は当医療法人及び山形県立保健医療大学の倫理委員会で承認された。また、対象者全員から説明と同意を書面で得た。
【結果】
対象者の年齢78±7.7歳、性別男性7名32%女性15名68%、身長149.8±10.8cm、体重55.1±11.8kgであった。歩行速度と各測定項目との相関を見ると、快適・最大の2つの歩行速度とも歩幅と極めて高い相関を示し、また筋力では、大腿四頭筋(r=0.44,0.46)よりも殿筋群特に大殿筋と高い相関(r=0.74,0.73)を示した。バランス因子については片足立ちの時間と高い相関を示した。さらにTUGに高い相関、ファンクショナルリーチと股関節伸展角に比較的高い相関が見られた。精神面及び生活活動度の因子については、生活空間に高い相関、老研式活動能力指標に比較的高い相関が見られた。その他の因子に有意な相関は無かった。
【考察】
歩幅と大殿筋力にも直接高い相関があったため、虚弱高齢者の歩行速度決定因子は、歩幅に関係した機能(股伸展角度、殿筋群、片足立ち時間)の関与が大きいことが、この研究では推測された。歩行速度と生活空間広がりとの関係も明らかになった。
【まとめ】
殿筋強化を中心とした歩幅を上げる要素の機能強化が歩行能力の維持に重要と考えられた。

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© 2007 日本理学療法士協会
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