医療マネジメント学会雑誌
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糖尿病へのクリティカルパスの応用
小堀 祥三高橋 毅東 輝一朗蛯原 賢司宮村 信博山田 和範後藤 嘉樹吉成 元孝平松 真祐東堂 龍平宮崎 久義
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2003 年 4 巻 2 号 p. 292-296

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抄録

糖尿病教育・血糖コントロールクリティカルパス (以下パス) を作成し、糖尿病へのパスの応用を検討した。平成12年4月から13年3月まで糖尿病教育・血糖コントロールを目的として入院した2型糖尿病患者556名 (年齢35歳から79歳) を無作為にパス使用群と非使用群の2群に分割し、パス使用群255名 (男136名、女119名) と非使用群253名 (男148名、女105名) を比較した。在院日数予定はパス使用群を14日、非使用群は過去2年のパス導入前の平均在院日数26日と設定した。在院日数、在院日数予定達成率、さらに、退院半年後、1年後の血糖コントロール状態を比較検討した。両群の年齢に有意の差なく、在院日数は17.1±5.5日と26.6±6.4日でパス使用群が有意に短縮した (p<0.001) 。しかし、在院日数予定達成率は36.5±48.1%と56.5±49.7%とパス非使用群が有意に達成された (p<0.001) 。在院日数予定達成のバリアンスは延合計308件で患者要因265件、職員要因33件、施設要因8件、社会要因2件であった。両群間の退院半年後、1年後のHbAlcにも有意の差なく、治療効果がみられた。パスの使用は在院日数短縮に対して極あて有効であり、退院基準達成でも両群間に有意の差はなく、少なくとも医療の質については同等であると考えられた。さらに、退院後の中期成績にも差はなかった。パス使用への患者アンケート調査でも患者満足度は高く、極めて有効な手段であると考えられた。今後の課題としてパス使用群における在院日数予定達成率の増加が残されている。

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