理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1207
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理学療法基礎系
二重課題条件下が障害物跨ぎ動作に与える影響について
*相馬 正之増田 司安彦 鉄平島村 亮太植松 寿志山下 輝昭吉村 茂和
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抄録
【目的】わが国における高齢者の転倒は、発生率が17.7~19.1%であり、その多くが歩行中に起こり、原因が「つまずいた」「段差があった」であることが多い。このつまずきの原因と考えられる拇趾-床間距離については、さまざまな報告がされている。しかし、歩行中に起こるつまずきを防止するためには、周囲環境に注意を向ける必要がある。つまり、歩行である運動課題と認知課題の並列処理が要求されることになる。しかし、これまでつまずきと認知課題の関係については、明らかにされていない。そこで本研究の目的は、予備調査として若年者における二重課題が障害物跨ぎ動作に与える影響について検討することである。
【方法】対象は、本研究の目的に理解が得られた若年者15名(平均27歳)とした。測定機器は、三次元動作解析装置および大型床反力計システムを用いた。測定は、運動課題のみのSingle Task(以下、ST)、運動課題中に認知課題を課すDual task(以下、DT)条件下の2通りで施行した。運動課題は、9m歩行路の中間地点に設置された高さ2cm、幅15cm、奥行き80cm(木製)の障害物跨ぎとし、各5回施行した。認知課題は100から7を漸次、減算とした。計測項目は、障害物を跨ぐ際の先導肢および後続肢の拇指-障害物間距離、障害物を跨ぐ際前後の踵-障害物距離、つま先-障害物距離とした。また基本的な歩行データとして、歩行開始2m地点および障害物を跨ぐ直前の歩行速度、歩幅、歩隔も計測した。統計処理は各5回施行の平均値を代表値として対応のあるt検定を用いた。
【結果】先導肢拇指-障害物間距離がST条件下6.1±2.0cm、DT条件下6.1±1.5cm、後続肢拇指-障害物間距離がST条件下3.1±1.3cm、DT条件下3.3±1.7cm、つま先-障害物距離がST条件下21.4±4.7cm、DT条件下20.7±6.5cm、踵-障害物距離がST条件下15.1±4.7cm、DT条件下13.3±6.5cmであり、ST条件下とDT条件下で有意な差が認められなかった。また、基本的な歩行データでは、障害物を跨ぐ直前の歩隔がST条件下12.3±2.4cm、DT条件下14.3±2.0cmであり、DT条件下で有意に高くなったが、他のデータにおいては有意な差が認められなかった。
【考察】本結果から若年者の障害物跨ぎの際におけるDT条件下では、拇指-障害物間距離などに影響を及ぼさず、障害物を跨ぐ直前の歩隔のみに影響を与えることが明らかになった。障害物を跨ぐ直前の歩隔のみに影響が認められたことは、安全に障害物を跨ぐための方略がされていることが示唆された。また、若年者におけるDT条件の影響については、本認知課題である100から7の減算が若年者の注意容量に影響を及ぼさず、そのために干渉効果がもたらさないことが考えられた。

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© 2007 日本理学療法士協会
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