抄録
【目的】
人は環境から受け取る様々な情報を同時並列的に処理し、適切な行動を企画し実行している。本研究の目的は、運動課題としてのペダリングと認知課題としてのパズルを用い、認知課題の負荷が遂行中の運動課題にどのような影響を与えるのかを明らかにすることである。
【方法】
対象は本研究の目的、実験方法について十分な説明を行い、同意を得た健常男性11名とした。平均年齢は25.4±4.3歳、平均身長は168.1±4.3cm、平均体重は60.5±7.8kgであった。運動課題にはセミリカンベント式エルゴメーター(ストレングスエルゴ240三菱電機)での50rpmの等速性ペダリングを用いた。パズル課題にはマジックスネーク(パルボックス社製)を用いた。対象者は、発揮トルクを最大トルクの10%前後に保つペダリングを学習した後、トルクを一定に保ように120秒間のペダリングを行った。ペダリング開始後30秒より解答時間を60秒以内とするパズル課題を与えた。運動開始から開始後30秒の期間をパズル開始前、同様に31秒から90秒までの期間をパズル実施中、91秒から120秒までの期間をパズル終了後として、それぞれの期間について平均トルクを算出するとともに、変動幅を求めた。変動幅は最大トルクと最小トルクとの差の絶対値とした。得られたデータから、パズル開始前に対するパズル実施中の平均トルクの変動を目視により類型化した。また、パズル開始前、パズル実施中、パズル終了後の各期間の変動量を比較するため、反復測定一元配置分散分析およびTukey-Kramer法の多重比較検定を用いて検討した。
【結果】
トルクの変動パターンは2類型に大別された。ひとつはパズル実施中にトルクが低下するパターンで7名が該当した。平均トルクはパズル開始前の11.2±2.8N・mからパズル実施中は8.1±2.9 N・mに低下した。もうひとつはパズル実施中にトルクが増加するパターンで4名が該当した。平均トルクはパズル開始前の14.3±3.7 N・mからパズル実施中は17.9±5.7 N・mに増加した。変動幅は、パズル開始前は2.6±1.1 N・m、パズル実施中は8.0±3.9N・m、パズル終了後は6.7±3.9N・mであり、有意な差を示した(p<0.05)。多重比較の結果、有意な差を示したのはパズル開始前とパズル実施中およびパズル開始前とパズル終了後であった(p<0.05)。
【考察】
本研究の結果は、ペダリング中にパズルを行わせると発揮トルクを一定に保つことが困難になることを示している。認知課題の負荷は運動課題の遂行を不安定にさせ、認知課題終了後にもその影響は残ると思われる。