理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1243
会議情報

理学療法基礎系
足部位置の違いによる立ち上がり動作の分析
*神尾 博代中俣 修古川 順光信太 奈美来間 弘展金子 誠喜柳澤 健
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】転倒の危険が少なく、より安定した立ち上がり動作を獲得することは重要である。片麻痺患者の場合、麻痺側を前方に位置した立ち上がり動作を日常生活活動として指導することが多い。そこで、足部位置を変化させることによって、その動作を遂行するためにどの程度の下肢関節モーメントが必要とされるのか把握することが必要であると考えられる。本研究では、足部を平行位にした場合と前後に置いた場合の立ち上がり動作を比較し、下肢関節モーメントについて分析することを目的にした。
【方法】対象は健常成人11名(男性7名、女性4名)とした。ヘルシンキ宣言に基づいて、被験者に実験の目的・危険性等を説明し書面にて承諾を得た。立ち上がり動作の計測には、三次元動作解析装置VICON370(Oxford Metrics社製)および床反力計(kistler社製)を用いた。背もたれのない座面高を下腿長の高さとする、椅子からの立ち上がり動作を課題とした。このとき、上肢は体側に自然下垂位とし、スピードは被験者の最も楽に立ち上がれる速さとした。また、足部位置は肩幅の広さとし、一側足部を前方に置いた右前型、左前型、平行位に置いた揃え型の3種類とした。各試行とも3回ずつ行った。この時の下肢の股関節・膝関節の伸展モーメントの最大値をもとめ、各試行間での比較検討を行った。統計解析は分散分析および多重比較を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果および考察】揃え型、右前型、左前型における股関節・膝関節の最大伸展モーメントの平均値(SD)は、左股関節では揃え型が74.5(16.0)Nm、右前型が107.7(22.7)Nm、左前型が79.9(29.5)Nmであった。右股関節では揃え型が69.1(17.7)Nm、右前型が77.3(25.8)Nm、左前型が93.6(20.1)Nmであった。左膝関節では、揃え型が57.1(11.9)Nm、右前型が83.4(15.6)Nm、左前型が7.7(8.0)Nmであった。右膝関節では揃え型が63.1(18.0)Nm、右前型が11.1(10.1)Nm、左前型が91.8(22.6)Nmであった。一側下肢を前方に出すことで前方側の膝関節モ-メントは有意に小さくなった。しかし、前方側の股関節伸展モーメントは揃え型と比べてほとんど変化が見られず、後方側の股関節・膝関節モーメントは揃え型よりも有意に大きなモーメントを必要とすることがわかった。臨床場面で、麻痺側下肢を前方に出した位置での立ち上がり動作を指導する場面があるが、これらの結果から非麻痺側である後方側の股関節・膝関節伸展モーメントが十分に発揮できないと立ち上がることが困難になると考えられる。今後、片麻痺患者について検討することで確認を行いたいと考える。なお、本研究は本学の研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した。

著者関連情報
© 2007 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top