理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 716
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神経系理学療法
脳卒中片麻痺患者に対する治療的電気刺激の効果
表面筋電図による検討
*松村 知幸林 伸浩新野 浩隆寺林 大史正門 由久木村 彰男
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キーワード: TES, 脳卒中, 表面筋電図
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抄録

【目的】脳卒中片麻痺患者に対する治療的電気刺激(Therapeutic Electrical Stimulation:TES)は痙性の抑制や筋再教育などでその有効性が示されており、多くの臨床場面で使用されている。近年、低周波成分の中に高周波成分を含み疼痛が少ない電気刺激装置が開発され、昨年の本学会において、それを用い脳卒中片麻痺患者におけるTES前後の臨床的治療効果(身体機能、歩行能力)報告した。そこで今回、麻痺側下肢の随意運動及び歩行時の筋活動を計測したので報告する。

【方法】対象は脳卒中片麻痺患者4例(男性2名、女性2名、平均年齢53.5±16.1歳、発症後期間2-156ヶ月)であった。歩行は、杖と短下肢装具使用3名、杖のみ1名で、全例近位監視以上であった。方法は(1)麻痺側下肢随意運動評価:被検者は端座位で麻痺側膝関節屈曲90度位から、最大伸展を可能な限り速く行うよう指示した。練習を実施した後10回連続で伸展・屈曲運動を行った。(2)歩行中筋活動の評価:自由歩行約30m行った。TES前後で、上記2つの運動時の表面筋電図及び関節角度を計測した。使用機器は、キッセイコムテック社製マルチテレメータシステムを用い、被検筋は大腿直筋(RF)、内側ハムストリングス(MH)、前脛骨筋(TA)、内側腓腹筋(MG)とした。膝関節角度は電気角度計(P&G社製)を用いて計測し、踵接地を同定するため、踵部にフットスイッチを添付し記録した。計測された筋電図は随意運動課題では膝関節最大屈曲位から次の最大屈曲位までを10回分、歩行では20周期を整流・加算平均した。TESは、端座位(股・膝関節90度、足関節0度)で行い、刺激部位は麻痺側TAとした。刺激装置はTechno Link社製TECHTRON EMS 2Hを用いた。刺激強度は筋収縮が確認でき、痛みが出現しない強さとした。刺激サイクルは5秒間の刺激、5秒間の休止を1サイクルとし、刺激時間は20分とした。

【結果】随意運動課題において、TES前では膝関節伸展時に拮抗筋であるMHの収縮が認められたが、TES後にはRFとMHの活動の相反性が明瞭となった。歩行時では、TAとMGの活動期と活動休止期が明瞭となり、また遊脚初期の膝関節屈曲角度が増加する傾向が認められた。

【考察】歩行時のTAとMGの活動が明瞭となったことは、TAへのTESによるMGの痙性抑制によるものと考えられる。また膝関節随意運動時の拮抗筋の同時収縮が減少し、スムーズな膝関節運動が可能になったことは、TESが刺激部位以外への髄節レベルを超えたところにも効果を及ぼしたことが考えられる。また歩行時の遊脚期膝関節屈曲角度が増加したことも同様の機序と考えられ、遊脚初期のRFとMHの同時収縮の減少により膝関節屈曲角度が増加したと示唆された。今後は症例数を増やすとともに、新しいTESの長期的な効果も検討していきたい。

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© 2007 日本理学療法士協会
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