理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 782
会議情報

神経系理学療法
脳卒中経鼻経管栄養例が経口摂取可能となった要因について
*信坂 洋平小林 由紀子清水 美緒子服部 友香並木 朋子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】当院において、入院時、摂食・嚥下障害で経鼻経管栄養に頼る症例は、1割未満と決して多くはないが、身体・精神機能ともに重症例が多く多職種による多角的な視点が必要とされる。今回我々は、入院時に経鼻経管栄養摂取であった症例の退院時に評価を行い、経口摂取が可能となった症例と不可能であった症例の二群間の比較を行い、傾向はないか検討し、臨床場面で実用的かつ一般的な摂食・嚥下機能の指標作成を目的に、有用な評価項目の絞込みを行った。
【方法】当院の回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中後遺症者で、入院時に経鼻経管栄養摂取であった症例20名。内訳は、脳梗塞10名、脳出血10名、男性13名、女性7名、年齢は平均67.70±11.87歳。パーキンソン病や神経難病、また、肺炎後の状態悪化による経鼻経管栄養摂取者は除外した。入院時に経鼻経管栄養摂取であった症例の退院時に評価を行った。評価項目は嚥下機能(取り込み、咀嚼、送り込み、むせ、流涎)、身体機能(Br.Stage上肢・手指・下肢、端座位機能、車椅子座位機能、BI)、精神機能(覚醒度、高次脳機能、精神機能)、内科疾患(喘鳴、痰量、誤嚥性肺炎の既往、消化器疾患、心疾患、既往歴)の計20項目で、ほとんどの項目で二者択一方式とした。嚥下機能はST、身体機能はPT、精神機能はOT、呼吸器機能はNrs.の各担当者が、観察にて主観的に評価を行った。退院時に経口摂取が可能となった群(経口摂取可群)13例(65.0%)と経口摂取が不可能な群(経口摂取不可群)7例(35.0%)で比較検討した。解析は、SPSSver13.0を使用しPearsonのカイ2乗検定を用いて行なった。
【結果】経口摂取の可・不可には、咀嚼、覚醒、精神機能障害の3つの項目が有意な関連を示した。その他の取り込み、送り込み、流涎、Br.Stage上肢・手指・下肢、端座位機能、車椅子座位機能、BI、高次脳機能、喘鳴、痰量、誤嚥性肺炎の既往、消化器疾患、心疾患、既往歴では有意な関連は示されなかった。
【考察】経口摂取の可・不可に対し「咀嚼機能」が関連してきたのは、咀嚼そのものが顎関節だけでなく舌や顔面の複合運動であること、また活動性や頚部の安定といった総合的な活動指標であるのではないか。覚醒の関連に関しては、機能の問題の前に「摂食行動」の発現に結びつかない事が大きな要因ではないかと推測される。精神機能障害(特に認知症状)の関連は、摂食行動への意欲や物の認識も重要な要素であることが、今回の調査からも従来示されているものと同様の結果となった。
【まとめ】食物を摂取するという行動を、覚醒が保たれた状態、食物や食器などへの認知、嚥下機能と段階をつけて評価する必要がある。今回の調査により、摂食・嚥下障害の視標として「咀嚼機能・覚醒度・精神機能」の3項目の絞込みが行えた。 今後は、各項目に対し段階付けを行い、変化率や項目の重み付けを調査して行く予定である。
著者関連情報
© 2007 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top