理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 944
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骨・関節系理学療法
RSDにより大腿切断を施行され、ADLに改善が見られた一症例
*前田 瞳土屋 辰夫澤田 あい高橋 茂勝又 壮一上野 豊
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キーワード: RSD, 大腿切断, 断端管理
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抄録
【はじめに】
反射性交感神経性ジストロフィー(以下RSD)により、大腿切断術を余儀なくされた症例を術前から担当する機会を得た。RSDに対する切断術の適応は、十分な除痛が得られず再発危険性が高いとされ支持する報告は少ない。本症例では、結果的に良好な経過を得られたので報告する。
【症例紹介】
36歳男性、身長179cm体重91kg。既往歴は、腰椎圧迫骨折、右膝靭帯損傷、右足部捻挫などがあった。
【経過および理学療法】
H14.12.13バイク事故による左膝内側側副靱帯損傷後、左下肢RSD発症。加療するも改善せずH17.7.25切断術を希望され当院入院。左膝を中心に大腿部から足先まで常時灼熱痛が見られ、痛みの数値評価スケール(以下NRS)7~10、左膝屈曲拘縮を認め、Barthel Index(以下BI)75点であった。理学療法やブロック療法を行うが、効果が得られずご本人のご希望により切断術を予定。Dr・PO・PTで切断・義足生活について説明を行った。ご家族の反対により他治療を模索するべく他院を紹介し退院となる。H18.6.6当院再入院。下腿に皮膚潰瘍性病変を認め、保存療法の効果が得られず、同意のもと同6.8左大腿切断術施行。断端長25cm、皮膚伸張性低下を認めた。健側機能・意欲が高く、社会復帰・スポーツ参加を目標とし、同6.13理学療法開始。疼痛・断端管理を徹底した。同7.7義足装着。吸着式IRCソケット・多軸遊動膝継ぎ手を使用し、動作練習を実施、同7.19歩行自立となる。経過中、ソケット不適合を呈し即時に対応した。患側疼痛は大きく変動したが術前の約半分であり、健側・腰部痛と共に自制内に調整できた。応用歩行練習を実施し、NRS1~5、BI100点、復職予定、フットサル実施可能となり、同10.2退院となる。
【考察】
本症例は、経過の中で断端創や皮膚病変が術前同様の疼痛を誘発したが、即時に評価対処し、POと連携しソケット修正を行うことで疼痛増悪を抑制できた。疼痛や断端創に対しPTが即時評価・対処する役割は重要であると考える。また、痛みが強い際に皮膚温の低下を認め、温熱療法を実施し反応良好であった。温熱刺激により交感神経抑制・循環改善・断端組織の柔軟性向上が得られ、疼痛自制・RSD再発予防の一助となったと考える。本症例で、疼痛が軽減した機序は究明できていないが、これらの迅速な対応により精神的負担を最小限に止め積極的に治療を行え、良好な経過を得られたと考える。さらに、義足生活に対し積極的なイメージを持って治療に望めるよう、術前からチーム介入できたことも重要であったと考える。疼痛管理でも、術前状態が把握できたことにより、適切な評価と対応が可能となった。
【まとめ】
RSDにより大腿切断を施行された症例を術前より担当した。術前より周到にチームアプローチすることで、治療をスムースに行えた。疼痛に対し迅速に対応することで、疼痛・ADL・QOLに著明な改善が見られた。
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© 2007 日本理学療法士協会
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