理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1369
会議情報

骨・関節系理学療法
骨粗鬆症患者における運動機能および骨塩量の年齢別特性
*安藤 卓伊藤 誠子清水 啓史黒川 正夫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】骨粗鬆症患者は、転倒による骨折を起こしやすい。予防的な観点から、患者の運動機能を個別に把握するとともに、運動機能の低下を年齢的特性から把握することが重要と考える。本研究の目的は、骨粗鬆症患者の運動機能や骨塩量の年齢別特性を調査し、今後の骨粗鬆症予防活動の一助とすることである。

【方法】対象は、市民検診後あるいは整形外科受診後、体力測定実施に同意を得た骨粗鬆症患者のべ122名(女性121名、男性1名、50歳~86歳、平均年齢69.5歳)である。方法は、122名の患者を5群(65歳未満25名、65~69歳45名、70~74歳21名、75~79歳21名、80歳以上10名)に分類し、体力測定項目である柔軟性(椅子坐位体前屈)・筋力(握力、腹筋、ブリッジ、膝屈伸Cybex測定、椅子からの立ち上がり、踏み台昇降)・バランス機能(開眼・閉眼片脚立位)・歩行能力(10m最大歩行、最大1歩幅)および骨塩量の結果を年齢別に比較した。統計処理は、一元配置分散分析法、クラスカル・ワーリス検定、多重比較検定を用い、有意水準は5%未満とした。

【結果】運動機能および骨塩量全項目において、65歳未満群と65~69歳群に有意な差はなかった。柔軟性では年齢別に有意な差はみられなかった。筋力項目では75歳以上で有意に低下している項目が多かった。バランス項目では開眼閉眼に関わらず70歳以上の3群で有意に低下していた。歩行項目でも歩行速度や最大1歩幅下肢長比は75歳以上の2群が有意に低下していたが、歩数は80歳以上群で有意に低下していた。骨塩量ではYAM(young adult mean:若年成人平均値)が平均的に80%を下回っていたが、大腿骨頚部が75歳以上の2群で有意に低下していた。

【考察】今回、骨粗鬆症患者に実施した体力測定値と、実施前に測定した骨塩量値を年齢別に調査した結果、全体的に75歳以上になると明らかに低下する運動機能が多かった。直接転倒原因になりやすいバランス能力は70歳以上で有意に低下しており、他の運動機能と比較しても早期に低下していた。また骨塩量も特に女性では閉経後女性ホルモン分泌の低下により急激に減少するが、その中でも75歳以上の大腿骨頚部がより低下している。これらの結果から、個別に運動機能や骨塩量を把握するとともに、各年齢においてより選択した運動指導や啓蒙活動が可能と思われる。

【まとめ】骨粗鬆症患者の運動機能および骨塩量を年齢別に調査した。結果、年齢別の特性がみられ、各年齢においてより選択した運動指導や啓蒙活動が可能と考える。

著者関連情報
© 2007 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top