理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 195
会議情報

内部障害系理学療法
初発心不全患者の再発に関わる要因についての検討
4年間の調査結果より
*竹崎 智香子島本 佳奈谷 真木川崎 麻里藤川 由香利田中 健一郎前田 秀博
著者情報
キーワード: 心不全, 再発, 患者特性
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】心不全は再発しやすい疾患であり,その再発要因として80歳以上の高齢者,左室駆出率低下があるとされているが,初発心不全患者の再発に関して検討した報告はない.本研究では,再発例の患者特性をより詳細にとらえることを目的に当院で加療を行った心不全患者の実態を調査したので報告する.【方法】平成14年4月1日からの4年間に心不全を主病名として入院,理学療法士が介入した症例のうち初発患者125名を対象にし,調査期間中再発が無い者(以下,非再発群),再発が有る者(以下,再発群)と分類した.そして2群において併存疾患,栄養学的血液パラメータ,心エコー所見,ADL変化,入院前生活状況の比較検討を行った.【結果】非再発群は111名(88.8%),男性55名,女性56名(死亡5名,年齢79.6±10.3歳),再発群は14名(11.2%),男性4名,女性10名(死亡1名,年齢85.7±7.9歳),再発1回13名,2回1例,再発までの期間11.3±12.5ヶ月であった.併存疾患は非再発群,再発群ともに高血圧,虚血性心疾患が多く,心不全の誘因は非再発群が肺炎,不整脈,虚血性心疾患,弁膜症が多い一方,再発群が初発時は虚血性心疾患,不整脈,再発時は不整脈,弁膜症に加えて,肺炎,腎不全,水分過多もみられた.また2回再発例の誘因は血圧コントロールと自己管理不良であった.左室駆出率でみた心機能は非再発群初発時50.4±13.9%,再発群初発時44.8±16.1%に対し,再発時42.6±12.9%であった.また栄養学的血液パラメータは差を認めなかった.Barthel IndexでみたADLは,入院時,退院時の順に非再発群が84.1±27.9点,76.0±33.2点に対し,再発群は初発時85.0±19.8点,80.0±23.9点,再発時81.0±21.0点,73.0±22.4点であった.入院元である施設,自宅への復帰率は非再発群75.8%に対し,再発群は初発時92.9%,再発時61.5%であった.入院前生活状況は,独居・老夫婦2人暮らしの割合は非再発群が38.7%に対し,再発群が42.9%であり,さらに再発群が非再発群と比較し障害者の日常生活自立度が低い傾向に,痴呆老人の日常生活自立度が高い傾向にあった.【考察】心不全再発例は先行研究同様に高齢者が多く,心機能は両群初発間で再発群が低い傾向に,さらに再発により低下する傾向にあった.また再発はADLや生活状況,全身状態により自宅・施設復帰が困難になる傾向にあった.心不全再発要因は心機能低下に加え,循環器疾患以外の疾患の発症や増悪,自己管理不良が影響しており,認知症を有する症例が35.7%を占めていることがその背景にあるものと推察される.以上より心不全再発予防には,循環器以外の疾患の予防と早期治療に加え,自己管理のサポートが不可欠であると考えられる.【まとめ】調査期間中の初発心不全患者のうち再発例は11.2%を占めていた.初発心不全患者の再発に関連する患者特性は,高齢,心機能低下,循環器以外の疾患コントロールや自己管理の不良と考えられた.
著者関連情報
© 2007 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top