理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 196
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内部障害系理学療法
重症心不全に対する理学療法アプローチ経験から
*高野 緑子舟見 敬成高宮 芳徳小野 正博
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キーワード: 心不全, リスク管理, 活動度
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抄録
【はじめに】これまで心不全患者に対する運動療法は禁忌とされてきたが、最近は禁忌ではなくむしろ低心機能患者ほど運動療法の恩恵が大きいとする考え方に転換されてきている。
今回、OMI(陳旧性心筋梗塞)による虚血から重症心不全となり入院、治療の為長期間の安静臥床を余儀なくされた方に対し、心臓リハビリテーションを実施した。開始時は倦怠感強く起居動作などの労作にても疲労出現していたが、心不全に対する治療の進行に合わせ、徐々にADL拡大・活動範囲拡大を図り一人暮らしの自宅へ退院可能となった症例を経験したので紹介する。
【症例紹介】69歳女性,身長:139.5cm,体重:33.3kg(BMI16.9),BP90bpm台,HR100mmHg台。 入院1ヶ月前から倦怠感・食欲低下・咳・呼吸苦あり。入院日に咳・呼吸苦の増悪出現し、近医より心不全・呼吸器疾患疑いあり当院紹介される。これまで胸痛は自覚したことなし。X線画像より両側胸水貯留・心拡大著明、心臓カテーテル検査より#6・#2-4に狭窄あり、虚血性の重症心不全と診断。入院時BNP:1340pg/ml(正常上限18.4 pg/ml)、LVEF:13%(基準値65~75%)、NYHA:III。入院18日目#6及び#3に対しPCI施行し4日間ICU在室。一般病棟転出後も安静臥床続き、X線画像上胸水の改善、呼吸苦減少、心胸比50%以下への低下を認めたため入院25日目にリハビリ処方となる。
【経過】理学療法プログラムとしては、臥位や座位での下肢の自動運動または低負荷での抵抗運動による筋力強化とともに、リスク管理を行ないながら順を追って離床を進めた。呼吸・循環状態や疲労の程度、自覚症状の有無などに注意し、安全性が確認できれば本人に許可を出して徐々に活動範囲拡大を行った。
入院41日目:ポータブルトイレ自立、58日目:歩行器でのトイレ歩行開始、60日目: 長距離歩行時は歩行器使用しながら自主的にも手すり歩行開始、77日目:Nsよりベッド不在がちと報告受けるほどに活動量増加し、199日目:独居の自宅へ退院となる。その際、日常生活上での注意点、心不全増悪時の諸症状など退院時指導実施。退院時BNP:937pg/ml、LVEF:22%、NYHA:I
【考察】心不全に対する理学療法の目的は、安静に伴うディコンディショニングの進行の予防・改善、適切なリスク管理下での機能障害の改善・心不全の病態及び長期予後の改善とそれに伴うQOLの維持・改善である。今回の症例では、心不全重度のため回復に時間がかり長期の安静臥床が強いられた。また本人の活動意欲も低く身体機能の著しい低下が危惧されたが、心リハを実施することによりディコンディショニングの進行の予防・改善とともに、安全にADL自立・活動範囲拡大を図り自宅退院へつなげることができた。また、心不全の増悪を示す所見が見られなかったことより、適切な運動量にて離床を進めることができたといえる。
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© 2007 日本理学療法士協会
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