理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 197
会議情報

内部障害系理学療法
左室補助人工心臓から離脱した症例に対する理学療法の経過
*高木 敏之花房 祐輔室岡 瀬里奈佐々木 久美樋田 あゆみ佐藤 真治牧田 茂間嶋 満許 俊鋭
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】
左室補助人工心臓(LVAS)は末期的重症心不全患者の治療手段として施行されているが、LVAS装着後に約10%の患者はLVASからの離脱に至る。現在、当院ではLVASを心臓移植へのつなぎとしてのみではなく、LVAS装着下で内科的治療を十分行い、積極的に心機能の回復を目指すことで、LVASからの離脱をはかる試みも行っている。今回は心不全にて当院でLVASを装着し離脱に至った患者に対する理学療法の経過について報告する。

【症例1】
48歳男性、診断は劇症型心筋炎。2005年7月にLVAS装着術施行。術後9病日からベットサイドにて理学療法を開始した。64病日に独歩にて500m歩行可能となり、初回の心肺運動負荷試験(CPX)を実施し、anaerobic threshold(AT)/PeakVO2(ml/min/kg)は9.8/12.8であった。その後はATレベルの自転車エルゴメータと歩行練習を隔日で施行した。この間、徐々に自己心機能の改善を示し(EF:54%)、106病日でLVAS離脱となった。離脱後9病日には病棟内歩行は自立レベルとなり、23病日から自転車エルゴメータ中心の運動療法を継続した(AT/PeakVO2:10.5/14.4、EF:51%)。離脱後 35病日に自宅退院となった。

【症例2】
35歳女性、診断は拡張型心筋症。2005年9月にLVAS装着術施行。術後4病日からベットサイドにて理学療法を開始した。50病日に独歩にて500m歩行可能となり、初回CPXを施行(AT/PeakVO2:7.4/11.0)し、自転車エルゴメータと歩行練習を隔日で施行した。この間、自己心機能の改善は乏しく、177病日から両心室ペーシングを行った(EF:38%)。内科的治療を継続し、心機能は改善傾向(EF:44%)が認められ、402病日にLVAS離脱となった。離脱後10病日には病棟内歩行は自立レベルとなり、26病日から自転車エルゴメータ中心の運動療法を開始し(AT/PeakVO2:8.5/14、EF:49%)、現在も継続中である。


【考察】
慢性的にドナーの少ない我が国では、心臓移植待機日数は長期に及び、合併症の発症で移植の機会を失うことも多い。LVAS離脱が可能であれば、重症心不全患者であっても退院・社会復帰することが期待できる。このようにLVAS装着にて自己心機能の回復を図るbridge to recoveryも心不全に対する有用な治療手段の一つと考えられる。
理学療法士がLVAS装着術後早期から介入することの意義は、LVAS装着前・後のdeconditioningを改善し、離脱に向け良好な身体機能や体力を維持・向上すると共に、LVAS離脱後からの良好な経過をもたらすことにある。


著者関連情報
© 2007 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top