理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1169
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生活環境支援系理学療法
3輪型自転車の導入で社会参加が高まった脳性麻痺児の一症例
*田中 一秀桜井 綾美
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キーワード: 3輪型自転車, 脳性麻痺, QOL
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抄録
【目的】痙直型両麻痺児の移動手段はその麻痺の程度や運動レベルによって決定される。多くは車椅子を使用する生活を余儀なくされていることが多い。本症例も同様に小学校において車椅子移動が主であり、運動を行うときも車椅子は欠かせない。しかし本児の希望により自転車作成を考案することとなり、実際に使用してからの3年間をここに報告する。【症例紹介】本児は現在10歳の男子であり、脳性麻痺による痙直型両麻痺を有している。平成12年4月より、理学・作業療法の治療を行っている。平成14年5月での問題点として両下肢における運動時の伸展・内転・内旋傾向が強く、立位保持が上肢による支持なしで30秒程度可能であり、歩行は両ロフストラント杖を使用し、はさみ足歩行を呈しながらも20m程度を近位監視で可能である。また日中の移動は車椅子を使用し、床上では四つ這い移動が主となっていた。【対策】平成14年5月より、週1回60分を4ヶ月にわたって介入を行った。自転車走行における上肢機能はハンドル操作による方向を決定し、下肢は体幹の坐位バランスをとりながら円運動を繰り返す動的・静的両面の機能が必要になってくる。本児の場合、坐位における下肢の屈伸運動を行うと上肢の屈曲が出現し転倒することが多かった。よってまず端坐位の状態で体幹のバランスと上肢の緊張を調整しながらの下肢の屈伸運動の介入を始めた。端座位にて下肢の屈伸運動を反復し、その際に転倒しないように体幹で姿勢調整を行い、同時に上肢の緊張を抑制するための課題を行った。【結果】開始当初は坐位が安定せずにバランスを崩していたが、1ヶ月過ぎた頃には安定し始め、徐々に上肢の緊張も抑制することができるようになった。しかしながら、下肢が伸展を行う際に股関節の屈曲は抑えることはできなかった。【考察】下肢伸展時の股関節屈曲が伴うと、自転車のペダル操作は困難だと判断した。そこで障害者用自転車製作をしている堀田製作所所長堀田健一氏と情報を共有し、本製作所が作成している障害者用3輪車「ラクラックーン ミニ」を本児の下肢の状態に合わせ、サドルの位置調整を行い、適合度を高め処方した。本製品のメリットは、下肢の円運動ではなくペダルを直線的に踏み込むことを推進力として使用できる点にある。痙直型両麻痺時の場合、下肢の屈伸運動が可能であっても、それを円運動に転換させることは困難な課題である。しかしながら本児の自転車へのモチベーションは高く、自転車を操作するためのその他の重要な要素は克服することができた。現在10歳になり成長に伴い自転車の適合度が低くなっているが、本製品を継続して使用し、自宅周辺を活発に移動している。【まとめ】車椅子と自転車の相違点は、継続した操作時間が上げられる。本児は自転車にて随意的な移動時間の延長や移動速度の向上を手に入れることで、QOL上の向上をはかることができた。
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© 2007 日本理学療法士協会
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