抄録
【目的】小児理学療法の目的には、発達の促進と障害の軽減と同時に、児と家族のニーズを中心にした支援によるQOLの向上も重要である。本研究の目的は、外来理学療法通院中の乳幼児のQOLを把握し、その関連要因を検討することである。
【方法】対象は、運動障害を有し、外来理学療法通院中の乳幼児72名であった。年齢は2ヶ月から6歳4ヶ月(平均34.6ヶ月)であり、疾患としては、脳性麻痺、後天性脳障害後遺症、脳形成不全などの神経系疾患以外に循環器系疾患、骨関節系疾患、呼吸器系疾患が含まれていた。発達の評価については、遠城寺式乳幼児分析的発達検査法、Alberta Infant Motor Scale(AIMS)、Gross Motor Function Classification System(GMFCS)を用いた。また、在宅医療的ケアの内容および参加の状態としての集団参加の場について調査した。QOLの評価には、健康・生活・介護評価表(Health, Life and Care scale: HLC scale)を使用した。HLC scaleは、医療・運動機能・精神機能・日常生活介護・社会参加の5領域で構成され、その総合点は0~100点に分布し、得点が高いほどQOLが高いことを示す。分析では、発達評価の尺度間の相関が高かったため、発達の指標としては遠城寺発達検査のみを使用し、HLC scaleと月齢、在宅医療的ケアの内容、てんかんの有無、集団参加の場、発達指数との関連性をt検定および相関係数にて分析した。有意水準は5%未満とした。
【結果】在宅医療的ケアでは、経管栄養12名、在宅酸素6名、気管切開5名(うち人工呼吸器1名)、吸引11名、てんかん20名であった。集団参加の場は保育園8名、幼稚園3名、障害児通園20名であった。遠城寺発達検査の各領域別平均は8.8から12.7ヶ月であり、1才以前の発達段階が半数であった。HLC scale総合点の平均は59.4±16.7(24-91)点であった。HLC scale総合点は月齢との相関はなく、遠城寺発達指数6領域及び吸引、経管栄養、てんかんの有無に有意な関連を認めた。集団参加の有無との関連は認めなかった。HLC scaleの領域別では、医療、運動機能、精神機能は、発達指数の全領域と有意な正の相関を認めた。日常生活介護では遠城寺発達指数のうち基本的習慣と言語理解の2領域および吸引との関連を認め、社会参加は発達指数との関連はなく、吸引、経管栄養との関連を認めた。
【考察】QOLは、暦年齢とは関連せず、運動発達やその他の発達領域、吸引や経管栄養の在宅医療的ケアの有無と関連していた。特に日常生活介護・社会参加領域では、在宅医療的ケアの関連が示唆され、対象児と家族の活動・参加の向上に向けた支援が重要であることが示唆された。