理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 42
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教育・管理系理学療法
問題基盤型学習における修正概念地図法のメタ認知促進機能に関する研究;RCTデザイン
*有馬 慶美我妻 浩二吉村 匡史郷 貴大
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抄録
【目的】問題基盤型学習(以下,PBL)においては「問題理解」および「探索」の過程で,「そこにある問題」を解決するために,学生自身が,自己の知識や思考過程を的確にメタ認知しなければ,問題解決のための自己学習のプランニングが行えない(舩山2005).この問題に対して,メタ認知機能を促進するために開発された概念地図法の効果を測定したが,十分な効果が得られなかった(武田2005).そこで今回は概念地図法の用い方に修正を加え,そのメタ認知促進機能の効果を従来の概念地図法と比較検討した.

【方法】理学療法学生39名を無作為に8グループに分け, 4グループずつ修正概念地図群と概念地図群に割り付けた.両群にPBLとして臨床問題を提示した後,「問題理解」の段階で,概念地図群には従来の方法で地図を作成させた.一方,修正概念地図群には従来の方法に加え,未獲得概念や命題を「?」で表現させた.そして両群に学習課題を提出させた.その後,両群の未獲得知識を多肢選択試験(以下,MCQ)を用いて測定し,対象が挙げた学習課題と未獲得知識の一致率を両群で比較した.両群における一致率の差の検定にはt検定を用いた.また,両群で既有知識に差がないことを確認するためにMCQ得点をχ2検定を用いて差の検定を行なった.なお,対象となる学生には研究意図を伏せ,両群を別室にて学習させた.一致項目数の算出,MCQ採点およびデータ処理は研究意図を伏せた第三者に依頼した.

【結果】両群間で既有知識に有意な差は認められなかった.メタ認知の促進機能を示す一致率においては,修正概念地図群が59.15±21.38%(mean±SD)で,概念地図群では27.84±7.50%であった.両者には有意な差が認められた(p<0.01).

【考察】以上の結果より,概念地図法は従来の用い方より疑問点を「?」で表現させる修正概念地図法の方が未獲得概念や命題を認識させるのに有効であった.このような結果の背景として,従来の概念地図法ではPBLの課題を学生が内的にどのように構造的に捉えているかを,学生が現在有している概念や命題だけを用いて地図が構成されるため,そこに未獲得概念や命題は表現されない.これに対して,今回用いた方法では,提示された臨床問題の構造を既有概念・命題とともに未獲得概念・命題も含めて表現しなければならないため,従来の用い方と比較して,未獲得概念・命題が概念地図に表現され,それが「学習課題」に反映されたものと推測される.しかしながら,すべてのグループにおいて臨床課題における鍵となるいくつかの概念や命題が表出されない現象が観察された.この点については,概念地図法の用い方について更なる工夫と改良が必要であろう.

【まとめ】PBLにおけるメタ認知機能を促進させる概念地図法の効果を測定した.従来の用い方より疑問点を「?」で表現させる修正概念地図法の方が未獲得概念や命題を認識させるのに有効であった.
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© 2007 日本理学療法士協会
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