理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1157
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教育・管理系理学療法
理学療法士養成教育におけるDeath Educationについて(第3報)
*鳥居 昭久木山 喬博林 修司加藤 真弓木村 菜穂子勝水 健吾野原 早苗松村 仁実戸田 秀彦
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抄録

【はじめに】
理学療法士(以下PT)養成学校におけるDeath Education(以下DE)の現状について調査し、各PT養成学校におけるDEの実施状況等について第39回日本理学療法学術大会にて報告、また、PT養成学校教員のDEに対する認識や、DE実施の問題点などの調査結果と、PT養成学校在学生に対するDE講義結果について第40回日本理学療法学術大会にて報告した。今回、これらの結果から、DE講義内容の検討を行い、PT及び作業療法士(以下OT)養成学校の学生に対してDE講義を実施し、その受講前後における学生の変容について調査検討したので報告する。
【対象および方法】
某養成学校PT及びOT学科1年生70名に対してDEを主体とする講義を実施し、初回講義及び最終講義にアンケート調査を行った。このうち、初回もしくは最終講義に欠席したもの、内容が不備だったものを除いた64名(男性36名19.3±2.5歳、女性28名18.4±1.3歳)の結果を有効として分析した。
調査は対象者の属性(性別、年齢、学歴、職歴、家族歴など)、死別体験の有無、死の判定についての考え方、死後の生き返りについての認識などを問う内容と、Hardtの「死に対する態度尺度」(以下態度尺度) 及び、Templerの「死に対する不安尺度」(以下DAS)を用いた質問紙法で実施した。また、自由記載で、講義を受けた感想を記載させた。
DEを主体とする講義は、合計30時間(15回)を2006年4月~9月にかけて実施した。主な内容は、「命の連鎖」、「死を学ぶ意味」、「死の定義」、「死の原因」、「受容」、「悲嘆」、「医療上の死に関する事項(ターミナルケア、自殺、尊厳死と安楽死、生殖医療など)」などである。また、PT・OTに直接関わる「障害」についても「死」同様に代え難い事実としてとらえて並行して考える課題を与えた。
【結果】
年齢、性別、学歴などにおいて質問項目との関連性は見られなかった。DAS(15点満点、高得点ほど強い不安を示す)は、受講前平均9.6±2.6点から受講後平均8.7±2.7点と、有意に低下し(P<0.01)、DE学習目標の一つである「死へのいたずらな不安を和らげる」について学習効果が有った。態度尺度においても「まじめに考えなければならない」が増加し、感想文の分析からも、「死」にまつわる知識、用語を正確に知ることなどから、漠然としていた不安が少なくなり、医療職種を目指す学生としてモチベーション向上に有効な影響があり、情意領域教育の一分野としてのDEの重要性が示された。

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© 2007 日本理学療法士協会
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