理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 8
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理学療法基礎系
持久性運動トレーニングは動脈血圧反射感受性と頸動脈伸展性に異なる影響を与える
小峰 秀彦菅原 順吉澤 睦子林 貢一郎横井 孝志
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抄録

【目的】
動脈血圧反射は血圧を一定範囲に保つための反射で,動脈血圧反射感受性は加齢に伴って低下し,これが心疾患につながることが指摘されている.一方,運動習慣は加齢に伴う動脈血圧反射感受性の低下を防止するが,そのメカニズムは不明であった.本研究の目的は,運動習慣が頸動脈血管の伸展性を上げ,その結果,頸動脈壁に存在するstretch-sensitiveな血圧反射受容器からの応答が変化することで動脈血圧反射感受性が高くなるという仮説を検証することであった.

【方法】
中高齢者(64±3才)の男女を対象に運動トレーニングを行い,運動トレーニング前,トレーニング開始2週間後,12週間後に動脈血圧反射感受性と頸動脈伸展性を計測した.運動トレーニングは歩行運動を中心とした持久性運動で,最大心拍数の65-75%の運動強度で30-45分/日,3-5日/週行なった.動脈血圧反射感受性はバルサルバ第IV相での昇圧,除脈応答を橈骨トノメトリー連続血圧計および心電図で記録し,beat-to-beat解析することによって評価した.頚動脈伸展性は心収縮期,心拡張期における血管断面積の変化を超音波画像から記録し,同時に頸動脈血圧をトノメトリセンサーで記録することによって評価した.

【結果】
動脈血圧反射感受性は,運動トレーニング開始2週間後に増加したが,頸動脈伸展性は変化しなかった.頸動脈伸展性は動脈血圧反射感受性の変化よりも遅れて,運動トレーニング開始後12週間後に増加した.

【考察】
持久性運動トレーニングは,中高齢者の動脈血圧反射感受性および頸動脈伸展性をともに増加する.しかしながら,動脈血圧反射感受性が頸動脈伸展性よりも早く変化した結果は,運動トレーニングによる動脈血圧反射感受性の変化が頸動脈伸展性の変化が原因で起こるのではなく,別の異なる原因で起こることを示唆する.

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© 2008 日本理学療法士協会
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