理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 9
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理学療法基礎系
圧受容器反射機能と嫌気性代謝閾値の関係
鈴木 昭広横田 進礒部 美与柳澤 千香子押見 雅義斎藤 康人高橋 光美洲川 明久宮永 哲
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抄録

【背景】
圧受容器反射は血圧の主要な調節機構であり、心疾患患者などの生命予後にも関わると報告されている。しかし、生理的状況の変化など、動的な修飾時の圧受容器反射に関しての報告は少なく、不明な点が多い。
【目的】
健常人において、運動時の圧受容器反射機能(baroreflex sensitivity:BRS)と嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold:AT)の関係を明らかにすること。
【対象と方法】
本研究に同意の得られた健常男性7名(平均年齢:31.9±5.1歳)を対象とし、心肺運動負荷試験(CPX)と、BRS測定を同時に行った。CPXは5分間の安静坐位後、自転車エルゴメーターで3分のウォーミングアップを経て、15watts/1分のramp負荷にて症候限界性に行った。また、呼気ガス分析にてATを決め、この時の心拍数(HRAT)を測定した。BRSの測定はトノメトリー法による血圧と心電図信号をsequential法にて解析し、BRSが安静時より低下し変化が認められなくなった時の心拍数(HRBRS)を測定した。そしてHRATとHRBRSを比較検討した。統計処理はWilcoxon検定にて行い、危険率5%未満を統計学的に有意と判定した。
【結果】
安静時BRSは7.5±2.9msec/mmHgであり、BRSが安静時より低下し変化が認められなくなった時のBRSは1.2±0.7msec/mmHgであった。HRBRSは113±9.6bpm、HRATは110.4±15.3bpmであり、両HR間に有意差は認められなかった。
【考察】
BRSは運動時に低下するといわれている。BRSの基本神経回路は延髄以下に存在し、循環調節が働いている。運動時にBRSが修飾をうける機構は、視床下部など上位中枢から延髄への修飾や、骨格筋の伸展受容器、化学受容器、心臓の迷走神経求心性神経も運動時の交感神経活動調節に参画すると考えられている。しかし、運動時にどの程度BRSの低下が認められ、循環調節などに関与しているかは十分に解明されていない。今回の結果でも、運動によりBRSは低下した。そしてBRSが低下し変化のなくなったHRBRSとHRATを比較することで、BRSとATに何らかの関係があると考えられた。この結果からAT後の化学受容体を介しての修飾が、BRSに関与していると推測された。
【結語】
運動時の、BRSとAT間の関係が示唆されたが、運動時の循環調節機能にどの程度BRSが関与しているかについては今後の課題である。

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© 2008 日本理学療法士協会
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