理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 19
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理学療法基礎系
並列課題を用いた閉眼立位保持におけるlight touchの影響
中村 浩之大平 雄一西田 宗幹望月 愛北林 正好吉田 実加
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抄録

【目的】
力学的な支持のないlight touchにより姿勢安定化が図れることが報告されている。しかし、その効果機序は明確になっていない。情報処理には資源依存とデータ依存があり、資源依存では実効的注意システムが必要となる。静止立位保持で視覚情報を遮断すると体性感覚へより注意を向ける必要があり、前頭葉の実効的注意システムが動因される。指尖からの感覚情報処理が資源依存によるものであれば、並列課題下ではその効果は認められないことが考えられる。本研究では、並列課題を用いた閉眼立位保持におけるlight touchの影響を検討することを目的とした。

【方法】
対象は若年健常者54名(男性12名、女性42名、平均年齢23±2.6歳、平均身長163.2±7.8cm)とした。 閉眼でのタンデム立位を基準条件とした。測定時間は30秒とし、測定開始10秒後から20秒間の測定値を採用した。認知課題として一桁の計算課題を用い、基準条件、light touchでの基準条件(条件1)、計算課題(条件2)、light touchでの計算課題(条件3)とした。Light touchは右外側、股関節の高さに設置されたhand held dynamometer(ANIMA社製μtasF-1)への右中指のみの接触とし、接触圧が1Nを超えないようにモニタリングした。測定には重心動揺計(ANIMA社製GRAVICORDER GS-2000)を用い、解析項目は総軌跡長(LNG;cm)、実効値(RMS;cm2)とした。統計処理にはWilcoxon signed rank test with bonferroni correctionを用いた。

【結果】
LNGは基準条件で112.20±37.78、条件1で45.47±30.81、条件2で113.86±45.11、条件3で50.17±22.04であった。基準条件、条件2に比べ条件1、条件3では有意に減少した(p<0.0001)。条件3に比べ条件1では有意に減少しており(p<0.0001)、基準条件と条件2には有意差は認めなかった。RMSは基準条件で7.22±6.55、条件1で1.48±3.91、条件2で5.76±4.61、条件3で1.02±0.68であった。基準条件、条件2に比べ条件1、条件3では有意に減少した(p<0.0001)。基準条件と条件2、条件1と条件3には有意差は認めなかった。

【考察】
本研究結果より、light touchにおける指尖からの感覚情報の処理について、資源依存とデータ依存のどちらの影響も受けることが示唆された。しかし、その大部分はデータ依存であり、並列課題処理下においてもlight touchによる姿勢安定効果は高いことがわかった。しかし、高齢者などでは情報処理の違いがある可能性もあるため検討していく必要がある。

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© 2008 日本理学療法士協会
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