理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 33
会議情報

理学療法基礎系
培養骨格筋細胞に電気刺激を与えるとmTORを介してp70S6kがリン酸化される
西浜 かすり岩田 全広平澤 純服部 真里鈴木 重行
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】骨格筋を肥大させる刺激のひとつに電気刺激がある。しかし、電気刺激がどのようにして筋肥大を引き起こすか、その分子メカニズムは十分に解明されていない。一方、成長因子のひとつであるinsulin-like growth factor 1(IGF-1)刺激による筋肥大については、IGF-1により細胞内のタンパク質キナーゼであるmammalian target of rapamycin(mTOR)を介してタンパク質合成を増加させるp70 S6 kinase(p70S6k)がリン酸化されることが重要であると考えられている。既に我々は、電気刺激を与えると肥大する培養骨格筋細胞のモデルを用いて、その筋肥大がmTORを介して引き起こされることを確認した.さらに、筋肥大を促す電気刺激がp70S6kのリン酸化を亢進させることまでを明らかにしている。そこで、本研究では電気刺激による筋肥大とmTOR/p70S6kの関連について探るため、電気刺激による培養骨格筋細胞のp70S6kのリン酸化と、そのp70S6kのリン酸化へのmTORの関与についてmTORの抑制剤(rapamycin: RAP)を用いて検討した。
【方法】実験材料にはマウス骨格筋由来の筋芽細胞株C2C12細胞を用い、I型コラーゲンをコートした培養皿に筋芽細胞を播種し、筋管細胞に分化させた。電気刺激は培養開始後7日目の筋管細胞に与えた.刺激条件はトレイン幅200 msecの正弦波を用い、刺激頻度1 Hz、電圧50 V、刺激時間60分とした。対照群は同じ期間に電気刺激を与えず、通常培養した細胞とした。p70S6kのリン酸化の指標は、刺激終了直後、5、10、15、30、60分後の細胞の全抽出物を電気泳動した後、western blot法にて全p70S6kとリン酸化p70S6kを検出し、全p70S6kの検出値に対するリン酸化p70S6kの検出値の割合を算出したものとした。さらに、刺激前にRAP(20 ng/ml)を培養液に投与して、同様の実験を実施した。
【結果】p70S6kのリン酸化は、電気刺激終了直後で対照群の約1.8倍に亢進した。5分後には約2.5倍まで亢進し、15分後までその傾向は維持され、30分後には対照群のレベルまで減少した.一方、RAPを投与した後の電気刺激によるp70S6kのリン酸化は、観察した60分の間、対照群とほぼ同レベルに抑制された。
【考察・まとめ】今回、電気刺激による培養骨格細胞のp70S6kのリン酸化はRAPにより抑制されることがわかった。よって、電気刺激による筋肥大はmTORを介してp70S6kがリン酸化される経路を介して引き起こされると推察された。以上のような筋肥大に関わる分子メカニズムを明らかにすることは、科学的根拠に基づく筋力増強や筋力低下を抑制する理学療法の開発につながると考える。
著者関連情報
© 2008 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top