理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 34
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理学療法基礎系
無血清による神経細胞培養方法の検討
真鍋 朋誉武田 正明佐々木 輝吉元 玲子松本 昌也井川 英明小川 和幸呉 樹亮河原 裕美弓削 類
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抄録
【目的】
近年,神経の再生医療への臨床研究が始まっている.神経幹細胞や骨髄中の間葉系幹細胞もその研究対象であり,これらを分化誘導して神経細胞を産生する方法が検討されている.骨髄細胞は,自家移植が可能であり,移植時の拒絶を抑制できる等の利点に加え,採取時の倫理的・技術的問題も少ない.幹細胞の培養には通常,動物性血清を含む培地が用いられる.しかし,このような培地を使用した培養細胞を生体移植すると,免疫拒絶反応が起こる可能性がある.そのため,将来的な細胞移植治療への応用を考えた場合,無血清培地での培養が有用と思われる.そこで本研究では,骨髄より採取した細胞を無血清培養にて増殖させ,神経細胞へと分化させる培養技術の確立を目的とした.

【方法】
4週齢マウスの両側大腿骨及び脛骨を採取し,骨髄細胞を洗い出した.採取された細胞は,ornithineとfibronectinでコーティングした培養皿を用い,無血清増殖培地で21日間培養した後,無血清分化誘導培地でさらに14日間培養して解析した.解析は,倒立型位相差顕微鏡による形態学的観察と細胞数の計測,神経細胞の未分化マーカーであるnestinと神経細胞の分化マーカーであるneurofilament,MAP2を用いた免疫抗体法,そしてneurofilamentを用いたRT-PCR法による分子細胞生物学的解析を行った.

【結果】
増殖培養において,培養14日後に細胞数は約3倍に増加したが,その後の7日間ではやや減少傾向となった.分化誘導培養7日後には骨髄細胞が神経様に形態変化し,分子細胞生物学的解析においてneurofilamentの発現量が増加した.培養14日後の免疫抗体法ではnestinの陽性率は減少し,neurofilamentとMAP2の陽性率は増加した.

【考察】
これまでに骨髄細胞を無血清培地にて増殖させた報告は散見されるが,増殖培養後に神経細胞へと分化させたものはみられない.本研究で用いた培地に含まれる栄養因子や培養皿のコーティング等により,骨髄細胞は増殖及び神経細胞へと分化したと考える.しかし,骨髄細胞の増殖培養では,培養14日後以降の細胞数はやや減少しており,今後増殖培養条件に関して改善の余地があると思われる.

【まとめ】
倫理的問題や移植時の免疫拒絶反応という観点から,骨髄細胞の利用や無血清培養は非常に重要である.本研究では,無血清培地による骨髄細胞の培養を行い,増殖及び神経細胞へと分化させることができた.今後,この培養細胞を動物疾患モデルに移植し,そのモデルに対しての理学療法の介入効果について検討したい.
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© 2008 日本理学療法士協会
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