理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 35
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理学療法基礎系
加齢による骨髄由来軟骨細胞の分化能の検討
小川 和幸佐々木 輝吉元 玲子真鍋 明誉松本 昌也井川 英明呉 樹亮河原 裕美弓削 類
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抄録

【目的】
関節軟骨の修復は難しく,その治療法として再生医療に注目が集まっている.骨髄中に含まれる間葉系幹細胞は,骨,軟骨,筋,脂肪に分化誘導することができるといわれている.骨髄は,局所麻酔により採取可能で,自家移植もできることから,骨髄細胞から軟骨細胞をつくる技術の確立が望まれている.OAやRAなどの軟骨損傷を罹患している患者は,中高齢者に多いが,加齢による骨髄細胞の増殖能力や軟骨細胞への分化能力の変化を報告した論文は少ない.そこで本研究では,骨髄細胞から軟骨細胞に分化誘導する際に加齢が与える影響を検討した.
【方法】
実験群を5週齢マウスと20週齢マウスの二群に分け,各群のマウスから大腿骨と脛骨を取り出し,骨髄細胞を採取した.採取した細胞を増殖用培地でconfluentになるまで培養し,軟骨分化誘導培地に切り替えて2週間培養を続けた.分化誘導前後に位相差顕微鏡を用いて形態学的観察を行い,分化誘導後7日,14日にトルイジンブルー染色を行った.また増殖培養1,7,14日後にDAPropidium iodideを用いて核染色を行い,蛍光顕微鏡にて無作為に撮影し、単位面積あたりの細胞数を算出した.分子生物学的解析としては,分化誘導後7日,14日に軟骨の分化マーカーであるaggrecanとtype II collagenのmRNA発現量を調べた.
【結果】
細胞数は,5週齢マウス群と20週齢マウス群で有意な差はみられなかった.形態学的には,5週齢マウス群では分化誘導後14日に細胞が密になり敷石状に配列していたが,20週齢マウス群では,5週齢マウスと比べ,軟骨様の変化は少なかった.トルイジンブルー染色によるメタクロマジーは,5週齢マウス群では発現が強かったが,20週齢マウス群では弱かった.軟骨の分化マーカーは,5週齢マウス群の方が20週齢マウス群よりも強く発現した.
【考察】
細胞数では有意な差はなかったが,トルイジンブルー染色やmRNAの結果から5週齢マウス群の骨髄細胞は20週齢マウス群よりも軟骨への分化能が高いことが示唆された.今回用いた骨髄細胞は,雑多な細胞集団であるため,今後は,間葉系幹細胞のみを分離精製し,検討する必要があると考える.
【まとめ】
本研究により,加齢により骨髄細胞の軟骨への分化能が低下することが示唆された.

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© 2008 日本理学療法士協会
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