抄録
【目的】
回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リハ病棟)において入棟時より在棟期間や転帰を予測することにより、早期にさまざまな介入が行いやすい。当院回復期リハ病棟における入棟時のADL能力と在棟期間及び転帰の関係を調査し、若干の知見を得たので報告する。
【対象と方法】
2006年4月1日から2006年12月28日まで当院回復期リハ病棟に入棟した140名を対象とした。ADL評価は当院で用いているKeiju Independence Scale(以下KIS)にて、食事・排尿・排便・整容・更衣・入浴・起居・移乗・移動・コミュニケーションを評価した。各項目の採点は、完全自立5、修正自立4、軽介助または監視3、中等度介助2、全介助1とし、その合計を2倍してKIS合計として用いた。入棟時KIS合計から、100-60をA群(78名)、59-20をB群(62名)とし、各群間で退院時KIS各項目、退院時KIS合計、在棟期間、転帰を比較した。退院時KIS各項目、退院時KIS合計、在棟期間はMann -Whitney検定を用いた。有意水準は0.05%とした。
【結果】
A群退院時KIS各項目平均食事4.8±0.6・排尿4.7±0.7・排便4.6±0.9・更衣4.5±0.8・整容4.7±0.7・起居4.4±0.6移乗4.7±0.6・移動4.3±0.73・コミュニケーション4.5±0.9・入浴3.8±1.1・合計平均89.8±11.5 。B群退院時KIS各項目平均食事3.8±1.0・排尿3.0±1.4・排便2.9±1.5・更衣2.6±1.3・整容3.0±1.3・起居3.3±1.3・移乗3.4±1.3・移動2.8±01.5・コミュニケーション3.3±1.2・入浴2.4±1.2・合計平均60.8±22.3。在棟期間A群50±24日B群79±42日。転帰はA群自宅退院94%施設入所3%転院3%死亡1%、B群自宅退院42%施設入所32%転院21%その他5%であった。退院時KIS各項目及び退院時KIS総合に有意なB群の低下を認めた。しかし、在棟期間には有意な差が認められなかった。
【まとめ】
今回の調査結果より、入棟時ADL能力が低い患者は退院時もADL能力が低くADLに介助を必要としていることがわかった。入棟時よりADL能力が高い患者は自宅退院する傾向が多く、入棟時よりADL能力が低い患者の約半数が他施設へ入所及び転院する傾向があった。今回の調査では在棟期間に有意な差は認められなかったが、入棟時ADL能力が高い患者は早期に退院する傾向が見られた。上記結果を踏まえ自宅退院に向けて早期に介護保険の申請、家屋環境の調整が必要であろうと考えられた。また、入棟時ADL能力が低い患者に関しても半数が他施設へ入所することから介護保険等の準備を早期からアプローチしなければならないものと考えられた。