理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 50
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理学療法基礎系
脳卒中片麻痺患者の上肢治療用リハビリロボットの開発
肩甲骨からの制御に着目して(第1報)
深堀 栄一清水 志帆子古賀 昭臣坂井 伸朗林 克樹村上 輝夫
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抄録

【目的】世界的にリハビリロボットの開発が進んでいる。我々は上肢機能回復で必要な肩甲骨と体幹の制御が可能な治療用ロボットの開発を行っている。その一環として、肩甲骨から効率的にロボットで運動を制御する為に必要な幾何学的構成を、実験用の肩装具と体幹装着具を自作し三次元位置センサーを用い解析し、知見を得たので報告する。

【方法】本研究参加に同意した健常成人男性1名(年齢22歳)を対象とし、左上肢を用いた。三次元位置センサー(Polhemus社製 Liberty240/8 磁気型6自由度センサー)を取り付けた肩装具と体幹装着具を被験者に取り付け、座位での外転・屈曲運動を解析した。運動範囲はロボット化での実使用を想定し外転・屈曲ともに約120°とした。肩装具は肩周辺の皮膚の揺動による偏位が最小と報告されている肩峰周囲を押さえ、腋下支持や肩甲棘支持部を備える。センサーを取り付けた体幹装着具に対する肩装具の相対位置をPC画面上に表示し、任意の4点のうち2点ずつ結ぶと、上肢の運動によって結んだ線の軌跡が描かれる。その軌跡は運動開始から1秒毎に表示され、合計で50パターンの線が表示される。それらの軌跡から得られたデーターを解析した。

【結果】PC画面上で軌跡を3次元CGにより視覚化し、肩装具運動をロボット機構として実現するための幾何学的モデルの構築を試みた。各軌跡はそれぞれ球面上の運動を行っていることが推測されたが、ロボット機構への適用を想定し、同一中心を持つ多重球へ逐次最小二乗法により近似した。4点の各近似球面との半径誤差の標準偏差は、外転は1.6mm、屈曲は1.2mmであり、軌跡は同一中心を持つ多重球上にフィット可能であることが分かった。また、4点の軌跡は平面上の運動も行っていることが推定された為、同一の法線ベクトルを持つ平行平面へのフィットを試みた。4点の各近似平面との誤差の標準偏差は、外転は1.9mm、屈曲は2.3mmであった。4点の軌跡は球面と平面両方にフィットしていることから、空間上の円にフィットしていると言える。外転と屈曲を合せた軌跡においても多重球フィットと平行平面フィットの誤差の標準偏差がそれぞれ2.2mm、7.7mmであり、肩装具は4平面に垂直で多重球の中心を通る軸を中心とした回転運動で駆動できる可能性が示唆された。

【考察】上肢の外転・屈曲運動時の肩装具は解析によって求められた運動軸を中心に運動していることが分かった。よって適切に位置と方向が決定された1軸のみで外転・屈曲運動時の装具運動を表現できることが示唆された。このことから、運動軸に駆動装置を設置することで体幹装着具から効率的に肩甲骨の運動を制御することが可能であることが分かった。今後も肩甲骨から効率的に制御する為のデーター取得を継続し、実験装置を改良していくことで安全で円滑に制御できるリハビリロボットの開発につなげていきたい。

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© 2008 日本理学療法士協会
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