理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 495
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理学療法基礎系
急性期リハビリテーションの転帰に関する調査
今後の取り組みに向けて
表 亮介小山 昭人
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抄録
【目的】急性期リハビリテーション(以下リハ)の効果は、離床をはじめとして早期にリハを開始する事で機能改善、ADL自立、自宅復帰、そして生命予後まで改善するといわれている。急性期総合病院にある当科では、原疾患治療と並行してADL自立、QOL向上を目標に急性期リハの効果を高めるよう努力している。今回は入院患者の実績から今後の急性期リハに向けた基礎的資料を得る事を目的とした。

【方法】対象は2004年1月から2007年6月の間に当科に処方された入院外来患者併せて全7003件のうち、集計可能であった理学療法を実施した入院患者4351~5272件とした。集計項目は終了転帰(自宅/回復期転院/慢性期転院/死亡退院)、平均年齢、16の依頼診療科(計30件以上)、理学療法(以下PT)開始までの平均日数、PT実施平均日数、開始時と終了時の平均Barthel Index(以下BI)、クリニカルパス(以下パス)利用状況、カンファレンスの運用状況とした。そして転帰別に集計結果を比較した。

【結果】転帰が悪化(自宅、回復期、慢性期、死亡)するに従い開始時平均BI(75.1、30.0、26.7、14.9)、終了時平均BI(91.0、57.2、42.5、0)は低下し、平均年齢(61.6、67.1、70.6、68.6歳)、PT開始までの平均日数(6.7、8.8、10.3、15.1日)、PT実施平均日数(25.4、39.9、44.0、38.7日)は増加する傾向であった。診療科別の集計では、自宅復帰率の高い科では開始時・終了時の平均BIが高く、PT開始までの平均日数、PT実施平均日数は短くなる傾向であった。また各BI項目の平均を比較したところ、開始時、終了時共にBIが低い群では移動や階段昇降が低い得点率であった。また医師、看護師、リハスタッフによるカンファレンスは8診療科、パス対象疾患のある科は7科であった。

【考察】ADL改善に向けた急性期リハの役割は大きく、移動はADL低下群で得点率が低い為、移動自立に向けたアプローチは重要と思われた。PT開始までの平均日数が長い科では廃用によって機能低下が大きく、実施日数も長くなってしまい転帰が不良となる可能性が考えられた。早期介入できるよう処方の迅速化、クリニカルパスの運用、カンファレンスによるチーム医療の実践などが重要であると思われた。
急性期リハの効果については初期介入が転帰に与える影響を分析する研究が多く、離床をはじめとする早期介入や集中的アプローチ、チームアプローチが重要であると述べられており、これらの情報を時系列に沿って集計し、データを蓄積していくことが今後の課題である。

【まとめ】後方視的に診療実績を調査集計し今後の急性期リハについて検討した。急性期リハの効果について実績を振り返り急性期リハを充実させる努力が重要と思われた。
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© 2008 日本理学療法士協会
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