理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 852
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理学療法基礎系
体幹筋筋厚の加齢変化
加齢による低下率の大きい体幹筋は何か?
市橋 則明池添 冬芽大畑 光司建内 宏重坪山 直生
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キーワード: 加齢, 体幹筋, 超音波
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抄録
【目的】高齢者の筋萎縮や筋力低下に関する報告は多いが、その報告の多くは下肢筋を対象にしたものである。高齢者の日常生活動作能力の維持には体幹筋が重要と考えられるが、若年者と比較して高齢者の体幹筋の筋厚がどの程度低下しているかを詳細に比較した報告はほとんどない。本研究の目的は、若年者の筋厚の基準値から高齢者の体幹筋の筋厚低下率を計算し、体幹筋の加齢による低下率の違いを比較検討することである。
【対象と方法】若年群として健常学生48名(平均年齢21.3±1.9歳)と高齢群として歩行が自立している施設入所高齢者31名(平均年齢81.9±6.5歳)を対象とした。筋厚の測定には超音波画像診断装置(GE横河メディカルシステム製 リニアプローブ 8MHz)を用いた。測定筋は右の腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋、脊柱起立筋、大腰筋とした。腹筋群の筋厚の測定は背臥位とし、腹直筋は臍から4cm外側の部位で、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋は、臍周囲上の腋窩線から2.5cm内方の部位で筋厚を測定した。大腰筋厚と脊柱起立筋の測定は、腹臥位とし、第3腰椎棘突起より7cm外側の部位とした。若年群の各測定データを基準値として高齢群の測定値の低下率を計算し比較した。統計学的分析には、反復測定分散分析と多重比較を用いた。
【結果と考察】腹筋群の筋厚は腹直筋(若年14.1、高齢8.0mm)、内腹斜筋(若年13.8、高齢5.8mm)、外腹斜筋(若年9.9、高齢5.1mm)、腹横筋(若年4.8、高齢3.9mm)の順で大きかった。体幹筋の中では腹筋各筋の筋厚よりも大腰筋(若年35.7、高齢17.9mm)と脊柱起立筋(若年34.3、高齢14.1mm)の筋厚が有意に大きかった。若年群の腹筋群の割合は腹直筋(33.0%)、内腹斜筋(32.4%)、外腹斜筋(23.3%)、腹横筋(11.3%)であった。一方、高齢群の腹筋群の割合は腹直筋(35.0%)と外腹斜筋(22.4%)は若年群と大きな変化は無かったが、内腹斜筋(25.5%)の割合が減少し腹横筋(17.1%)の割合が増加した。分散分析により各筋の加齢による低下率を比較すると、有意な違いが見られた。大きな低下率を示したのは、脊柱起立筋(59.0%)と内腹斜筋(57.9%)であった。次いで大腰筋(49.9%)、外腹斜筋(48.5%)、腹直筋(43.6%)であり、脊柱起立筋と内腹斜筋よりも低下率は有意に低かったがこの3筋間には有意な違いはなかった。最も低下率が低かったのは腹横筋(19.0%)であった。本研究結果より体幹筋の加齢による筋厚の低下率には差があり、腹筋群の中では内腹斜筋が最も低下しやすく、腹横筋が保たれていることが明らかとなった。
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© 2008 日本理学療法士協会
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