理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1024
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理学療法基礎系
ラット脱神経筋におけるナトリウムチャネル遺伝子発現の変化
小澤 淳也川真田 聖一黒瀬 智之橋本 将和山岡 薫
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抄録
【目的】電位依存性ナトリウムイオンチャネルは、膜電位の変化に反応して開閉するチャネルであり、興奮性細胞における活動電位の発生と調節に深く関わる。成熟骨格筋においては通常Nav1.4のみが存在するが、脱神経された筋ではNav1.5 mRNAが発現することが報告されている。そこで我々はさらに、脱神経筋におけるNav1.5 mRNA発現の経時的変化やNav1.4とNav1.5の遺伝子発現の割合を詳細に調べることで、Nav1.5発現の意味を考察した。
【方法】動物は8週齢雄性Wistar ratを使用した。ラットを麻酔した後、左坐骨神経を切断して実験側とし、無処置の反対側を対照とした。切断後3,14日のラットの両側ヒラメ筋を採取し、-80°Cで急速凍結して保存した。Trizolを用い各試料からtotal RNAを抽出し、DNase処理した後に逆転写酵素反応にてcDNAを作成した。リアルタイムPCRにてNav1.4、Nav1.5 mRNAの定量解析を行った。インターナルコントロールにはβ-actinを用いた。
【結果】実験群(脱神経群)および対照群のβ-actinに対するNav1.4 mRNAの比率は脱神経後3日でそれぞれ0.32±0.3対0.25±0.16、14日で0.20±0.13 対0.24±0.22であり、両群間に大きな差はみられなかった。一方、Nav1.5 mRNAは、脱神経後3日でβ-actinに対する比率は1.6×10-4±0.8×10-4対4.6×10-2±4.8×10-2であり、発現が約300倍に増加した(P=0.021)。脱神経後14日でもNav1.5 mRNAの発現は対照群4.9×10-4±0.18×10-4に対し、実験群1.9×10-2±0.52×10-2と約40倍の発現量であったが(P=0.034)、脱神経後3日の実験群との比較では42%に減少した。Nav1.4に対するNav1.5遺伝子発現の比率では、脱神経後3日で0.32±0.44%、14日で0.13±0.1%であった。
【考察】脱神経したヒラメ筋で遺伝子発現がみられたNav1.5はテトロドトキシン(TTX)抵抗性であり、TTX感受性であるNav1.4よりもチャネルの活性化の閾値が低い。今回の遺伝子発現の変化とタンパクレベルの変化が一致するとすれば、神経支配を失った骨格筋ではその直後から電気的興奮に対する応答が変化しているかもしれない。
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© 2008 日本理学療法士協会
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