理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1349
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理学療法基礎系
当院再入院患者の傾向について(第2報)
脳梗塞前後の疾患を中心に
早川 和秀
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抄録
【はじめに】筆者は第42回日本理学療法学術大会において過去10年のデーターベースより再入院患者の傾向について発表した。その中で脳梗塞が再発で最も再入院する傾向が強かった。そこで今回、1回目の入院が他疾患で2回目が脳梗塞であるもの(以下前疾患)と1回目が脳梗塞で2回目が他疾患であるもの(以下後疾患)に分類し、他疾患にどのような傾向があるのか検討した。
【対象と方法】当院PTデーターベース(以下DB)における平成7年2月25日から平成18年9月11日まで入院された患者で、PTを実施した5964例中再入院歴のある2392例(971名)を対象とした。方法はDBより前疾患・後疾患に分類し、男女別・疾患別・初回PT開始日から再入院後PT開始日までの期間(以下期間)別に振り分け分析した。検定は対応のないt検定を用いた。
【結果】DBより分類し、該当患者159名中、前疾患が86名(男性41名、女性45名)、平均年齢73.6±12.1歳、平均期間937.7±740.1日、後疾患は73名(男性31名、女性42名)、平均年齢79.1±8.5歳、期間499.1±624.6日であった。前疾患・後疾患とも男女の期間以外は全てに有意差が認められた。前疾患の上位10疾患は脳出血15.0%、変形性脊椎症15.0%、大腿骨頸部骨折11.6%、骨折10.5%、一般外傷5.8%、糖尿病5.8%、急性心疾患4.7%、廃用性症候群4.7%、変形性関節症3.5%、癌・悪性腫瘍2.3%であった。後疾患の上位10疾患は大腿骨頚部骨折12.3%、骨折12.3%、悪性腫瘍8.2%、脳出血8.2%、急性肺疾患5.5%、廃用性症候群4.1%、腎疾患4.1%、慢性心疾患4.1%、変形性脊椎症4.1%、TIA・その他2.7%であった。
【考察】前疾患は発症年齢が後疾患より低く、2年半で脳梗塞を発症している。また脳出血、変形性脊椎症、大腿骨頚部骨折の順で多い結果となった。脳出血から脳梗塞は再発といえるが、変形性脊椎症や大腿骨頚部骨折は入院によるストレス・活動低下など急激な生活変化より脳梗塞を発症させる因子を作ったのではと予測できる。脳梗塞発症予防には、前疾患後長期にわたる運動療法の継続と高血圧・糖尿病など内科的な疾患の自己管理能力を促す指導が重要であると考える。後疾患は脳梗塞後1年半程度で発症し、高齢と脳梗塞による転倒・骨折や合併症の悪化が示唆される。男女差は前疾患・後疾患共に女性より男性が早期に罹患している。以上のように前疾患・後疾患が脳梗塞にどのような影響があるか考察してきたが、二次予防が大切である。患者の生活習慣や合併症を理解し、疾患傾向を見極めながら日々の臨床に携わっていきたい。
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© 2008 日本理学療法士協会
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