理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1350
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理学療法基礎系
高齢大腿骨頚部骨折患者における退院先に関与する因子の検討
岡本 峰生森本 義朗倉田 祐樹岩月 律道南 圭介田中 吉広石黒 茂夫杉村 公也
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抄録
【目的】
大腿骨頚部骨折(以下頚部骨折)は,高齢者に多く発生する骨折の中でも代表的な骨折である.また,理学療法(以下PT)の対象疾患としても,当院では脳血管疾患と並んで多く処方されている.高齢者の寝たきりの原因としても重要視されている頚部骨折は,今後の発生率増加も危惧されており,効率的な理学療法アプローチが重要な課題である.そこで今回,当院で治療を受けた高齢頚部骨折患者を対象に,それらの退院先とその関連因子について検討をおこなったので報告する.

【方法】
1997年3月から2001年4月までの期間に,当院にて頚部骨折に対する観血的治療の後,理学療法を施行された106名のうち,自宅もしくは施設に退院した65歳以上の高齢者89名(男性12名,女性77名,平均年齢82.9±7.2歳)を対象とした.調査はまず退院先が自宅である者(以下自宅群)と施設である者(以下施設群)に分類し行った.調査の項目は,性別,年齢,在院日数,受傷からPT訓練開始までの日数(以下受傷からPT),受傷から手術までの日数(以下受傷からope),骨折型,骨折側,認知症の有無,受傷前のFIM歩行項目点数(以下前歩行点),退院時のFIM歩行項目点数(以下ENT時歩行点)の10項目とした。なお,FIM歩行項目点数は5点以下を要介助群,6点以上を自立群とするカテゴリー化の後に使用した.分析はまず自宅群,施設群間の群間比較を調査10項目において行った.カテゴリー変数にはカイ二乗検定を用い,連続変数にはMann-Whitney 検定を用い有意水準を5%とし検定した.その後退院先との関連因子の分析を,自宅退院と施設退院を目的変数としたロジスティック回帰分析をステップワイズ法にて検討した.なお,説明変数は退院先と有意な相関がみられた項目を用い,結果はオッズ比が有意な変数を退院先決定の関連因子として採択した.

【結果】
調査10項目における群間比較においては,骨折側で有意な相関を認め(p<0.05)自宅群で左側骨折が多い結果であった.また,認知症の有無,ENT時歩行点でも有意な相関を認めた(p<0.01).その他の項目では相関を認めなかった.また相関のみられた3項目について,ロジスティック回帰分析を用い関連因子の分析を行った.結果,ENT時歩行点(p<0.01,オッズ比=7.54)の項目で退院先との関連が有意であり,この項目のみが関連要因として採択された.

【考察】
本研究の結果から,骨折側,認知症の有無,ENT時歩行点は退院先との相関があることが確認された.これらの結果は,それぞれ自宅退院患者に左側大腿骨頚部骨折者,非認知症者が多く,また退院時におけるFIM歩行項目での点数が高いであろう事も示唆していた.そしてそれらの中でも,退院時のFIM歩行点数は退院先との関連についてのロジスティックモデルとの適合も良好であり,退院先決定因子としての有用性も示唆された.
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© 2008 日本理学療法士協会
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