抄録
【目的】
当院では平成16年度より一泊人間ドック参加者を対象として運動教室を実施しており参加者の大半が健康維持の方法として習慣的な運動の必要性を感じている。しかし先行研究において年一回の運動教室では参加者のその後の運動習慣に変化がみられないのが現状であった。そこで従来の運動教室の内容に再評価の項目を追加して再評価の有無・期間の違いにより参加者の健康・運動意識、運動習慣への影響を調べたので報告する。
【方法】
対象は同意の得られた当院職員28名(年齢27.8±6.03歳)、無作為に初期評価後の再評価実施の有無・期間からA群:3ヵ月後アンケートのみ9名、B群:3ヵ月後に再評価実施10名、C群:1カ月毎に3ヶ月間再評価実施9名とした。評価項目はアンケート項目(行動変容ステージ(以下ステージ)、健康・運動への意識)、測定項目(膝伸展筋力、体力レベル)で測定後に結果説明・個別指導を行った。そして各群で初期評価時(以下初期時)及び3ヵ月後(以下最終時)のアンケート結果からステージ分布、健康意識、運動意識の変化を比較した。ステージ分布は各群の初期・最終時の比較をWilcoxonの符号付順位和検定にて統計処理を行った。健康・運動意識は意識の高い順に5点満点を各5項目(各計25点満点)として各群で初期・最終時の合計・項目別に平均点をt検定にて統計処理を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
ステージ分布:A群は有意差なし(P>0.1)、B群は優位に改善(P<0.01)、C群は優位に(P<0.01)後退となった。健康・運動意識:B群では健康意識の合計点(P=0.001)、健康状態(P=0.009)が有意差あり、情報収集(P=0.066)、食事・睡眠(P=0.052)、運動の重要性(P=0.051)が向上している傾向にあった。C群では運動意識の合計点(P=0.039)、運動に対する喜び・楽しみ(P=0.035)が有意差あり。健康意識の合計点・健康への興味・情報収集・運動の重要性に有意差は見られなかった。
【考察とまとめ】
ステージ分布より、再評価実施が運動習慣の改善に効果的であるが、介入時期が適切でないと逆効果となることが示唆された。習慣改善のためには自己の問題行動への気づきとその後のセルフモニタリングの促進が必要であるが、アンケート結果からB群では再評価までの3ヵ月間で健康管理と運動実践の重要性を意識して積極的に健康状態の把握と改善に努めていったことが示唆された。つまり再評価提示が運動実践への動機づけとなる可能性を示している。一方C群では介入時期が適切でなく、成功体験が得られずに運動習慣の重要性や習慣改善への自己効力感に揺らぎが生じた結果、健康状態の把握や運動の重要性の自覚まで至らず運動実践への動機づけとならなかったと考察できる。今後さらに効果的な介入時期について検討していきたい。