抄録
【目的】
我々は第42回日本理学療法学術大会において、片麻痺者を対象とした30秒椅子立ち上がりテスト(以下、CS-30)と麻痺側下肢を一歩引いて行うCS-30(以下、改変CS-30)を実施し、歩行能力の関連性を検討した。この結果、麻痺側下肢を一歩引いて行う改変CS-30の方が、従来のCS-30よりも歩行能力を反映することを報告した。しかしCS-30・改変CS-30と下肢筋力との関連性を明確にすることが今後の課題となった。
本報告は、片麻痺者におけるCS-30と改変CS-30に対する下肢筋力との関係を明らかにする事を目的に、CS-30・改変CS-30と膝伸展筋力との関連性を検討した。
【対象と方法】
対象は、本研究の主旨に承諾を得た、上肢支持なしにて椅子からの立ち上がり動作が可能な慢性期片麻痺者28名とした。対象の歩行自立度別内訳として、Functional Independence Measureの歩行項目にて歩行自立群ならびに歩行介助群は、各々14名であった。CS-30は、原法に基づき、肘掛のない40cm高の椅子を使用して、開始肢位を両膝関節屈曲100°の座位とし、30秒間における立ち上がり回数を測定した。改変CS-30は、Denisらの方法を一部改変し、開始肢位を麻痺側膝関節屈曲100度・非麻痺側膝関節屈曲75°の座位姿勢から、同じく30秒間における立ち上がり回数を測定した。また膝伸展筋力は、端座位膝関節90°屈曲位における等尺性膝伸展運動を麻痺側・非麻痺側ともに3回実施し、Hand-Held Dynamometerを用いて測定した。筋力値は3回の平均値を体重で除した値を検討に使用した。
検討項目は、CS-30・改変CS-30に関して(1)膝伸展筋力との相関、(2)対象を歩行自立群と歩行介助群に分けて、各群別に膝伸展筋力との相関を求めた。なお統計にはSPSS統計を使用し、統計処理としてSpearmanの順位相関係数を用い有意水準は5%未満とした。
【結果と考察】
本研究の結果、全対象者においてCS-30・改変CS-30ともに麻痺側・非麻痺側の膝伸展筋力とr=0.6以上と中等度の相関を示した。また歩行自立群と歩行介助群別での検討においては、歩行介助群ではCS-30との相関は認めなかったが、改変CS-30とは中等度の相関(r=0.65)を認めた。
片麻痺者の立ち上がり動作は麻痺側下肢の位置によって麻痺側下肢筋活動量の影響を受けるとの報告があり、本研究においても歩行介助群の麻痺側下肢筋力との検討で改変CS-30のみが関連する結果となった。
以上の結果より歩行介助群では、改変CS-30は従来のCS-30と比較して、麻痺側膝伸展筋力をより反映した、機能評価に成り得る可能性があると考えられた。