理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 107
会議情報

骨・関節系理学療法
体幹伸展エクササイズ時の下肢外転による腰部背筋酸素化ヘモグロビン量の変化
呼吸による影響
伊藤 俊一久保田 健太隈元 庸夫佐々木 裕子烏野 大藤原 孝之星 文彦高柳 清美
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抄録
【はじめに】
演者らは近赤外線分光法と筋電図を用いて,椅子座位での体幹伸展運動時に下肢外転を加えることにより腰部伸展筋の筋血液量と筋活動量が増加する,筋収縮後の筋伸張によるストレッチング効果として体幹柔軟性が向上することを第42回の本学会で報告した.この結果は,体幹伸展運動時に下肢外転を加えることでより効率の良い体幹伸展エクササイズとなるのみならず,筋収縮後の筋弛緩によるリラクセーション効果が得られた結果と考えられた.
筋収縮後の筋弛緩に関する報告は数多く,従来からよりリラクセーション効果を高めるために呼吸との関係が指摘されているものの詳細な報告はない.
本研究の目的は,体幹伸展エクササイズ時に下肢外転と呼吸を加えることにより,腰部伸展筋の血液量と体幹柔軟性に与える影響を明らかにして,より効率の良い体幹伸展トレーニング法に関して検討することである.
【対象と方法】
対象は,健常成人20名(男性10名,女性10名,平均21.8歳)とした.
測定は,浜松ホトニクス社製近赤外線分光器NIRO-300を用いて,椅子座位での体幹伸展運動時の腰部多裂筋近傍の血液量(酸素化ヘモグロビン量,脱酸素化ヘモグロビン量)をモニタリングした.測定プローブは,第5腰椎棘突起より2-3横指外側の多裂筋近傍に設置した.測定姿位は,背もたれを壁に密着させた椅子座位として,両上肢は胸部前方で組み,両股関節は90°屈曲位とした.測定条件は,1)3秒間の体幹伸展運動と10秒間の休息,2)1)+下肢外転,3)2)+深呼吸(収縮時吸気,休息時呼気)とし,各々5回ずつ繰り返した.各々の測定順は無作為として,24時間以上間隔を開けて再測定を行った.測定前後には,Finger Floor Distance(FFD)と体幹伸展可動域も計測した.
統計学的解析にはMann-Whitney U-testを用い,有意水準を5%未満として検討した.
【結果】
腰部多裂筋近傍の血液量は,1)<2)<3)の条件順で各々の休息時に有意な増加を示した.同時に測定前後で,FFDと体幹伸展可動域も1)<2)<3)の条件順で有意な増加を認めた.
【考察】
腰痛症患者に於いて,腰部背筋の阻血状態は筋々膜性由来の腰痛をはじめとした疼痛の原因となるのみならず,体幹柔軟性を制限して日常生活を狭小化するとされている.今回,健常者を対象とした結果でも,体幹伸展筋の伸張性は筋血流量の増加により改善する可能性と,さらに呼吸を加えることでその効果がさらに向上する可能性が示唆された.
今後,腰痛症患者を対象としてさらに検討を加える必要はあるが,以上の結果は椅子座位での体幹伸展エクササイズ時に下肢外転運動と呼吸を加えることは,腰部症など腰背部に筋阻血による疼痛や筋の伸張制限のある患者に対して,有用な体幹伸展エクササイズとなり得ると考えられた.
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© 2008 日本理学療法士協会
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