理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 111
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骨・関節系理学療法
体幹訓練が肩関節へ及ぼす影響
池田 梨香鶴田 崇佐藤 啓介緑川 孝二
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キーワード: 体幹, 肩関節, 安定性
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抄録
【はじめに】肩関節運動は単一の筋によるものではなく複数の筋によるものである。また、上肢は肩甲骨・鎖骨を介して体幹に連結している。さらに体幹は身体の中心部であり、体幹機能が上肢・下肢機能へ影響を与えると言われている。特に投球動作のような全身運動の場合では、体幹筋の機能向上が肩関節機能に大きな影響を与えていると考える。
そこで今回、腹式呼吸を強制呼気で行なうことにより、肩関節にどのような影響があるのか、検討した。
【対象・方法】対象は、愁訴のない健常成人16例(男性8例・女性8例)・32肩(男性16肩・女性16肩)、平均年齢29.6歳(21~49歳)。方法は股関節・膝関節90度の端坐位にて、腹式呼吸を10回行ってもらった。その前後に、肩関節の評価として、elbow extension test(以下ET)、elbow push test(以下EPT)を行なった。また、MICRO FET(HOGGAN社)を用いて内・外旋・肩甲骨面挙上(以下挙上)筋力を測定し、得られた値を被検者の体重で除して基準化した後、t検定にて比較した。肩甲骨偏位は両肩甲骨下角、scapula spine distance(以下SSD)を利用し、肩甲棘内側端と脊柱棘突起間距離(以下SSD-U)、肩甲骨下角と脊柱棘突起間距離(以下SSD-L)の左右差1cm以上を偏位とした。
【結果】腹式呼吸後は、ET陽性は16/32肩が3/32肩、EPT陽性は16/32肩が7/32肩となった。また、筋力においては、挙上・内・外旋全てで有意に改善した。肩甲骨偏位は、下角偏位有り12/16例が2/16例、SSD-U偏位有り10/16例が3/16例、SSD-L偏位有り7/16例が4/16例になった。
【考察】今回、肩関節運動前に腹式呼吸を行なうことで、肩関節の機能が向上した。上肢は肩甲骨を介して体幹に連結しており、腹部筋の筋収縮が促されることによって、体幹が安定し、それに伴い肩甲骨が安定することが肩関節機能向上の要因の一つであると考えた。特に投球動作では体幹が非固定位で行なわれるため、日常生活動作に比べより安定した肩関節の動きが要求される。今回の研究により、体幹にアプローチし体幹の安定性が得られることで、安定した肩関節運動・投球動作が可能となることが予想される。
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© 2008 日本理学療法士協会
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