理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 126
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骨・関節系理学療法
大腿骨頸部骨折受傷者における歩行予後に影響を与える中枢性因子の検討
五嶋 裕子刀根 章浩中村 裕貴麻生 よしみ佐野 恵美子高倉 保幸関谷 繁樹
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抄録
【目的】我々は、大腿骨頸部骨折36例を対象に、急性期病院の平均在院日数である術後3週目の歩行能力に影響を与える因子について、重回帰分析を用いて検討したところ、単純平均反応時間(RT)や改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)といった中枢性因子が関係していることがわかり、全学術大会で報告した。今回更に症例数を増やし、術後3週目の歩行能力を予測するために有用な術後早期の評価項目を検討したので報告する。

【方法】対象は、手術による固定性が良好で術翌日より荷重許可されている大腿骨頚部骨折受傷者60例(男性13例、女性47例)、年齢は76.2±10.5歳(平均±標準偏差)であった。初期評価項目は、性別、年齢、患側および健側の両大腿四頭筋筋力(MMT)、RT、HDS-R、日本脳卒中学会・脳卒中高次脳機能スケール(JSS-H)とし、実施期間は13.7±2.3日であった。術後3週目の歩行能力の評価は、機能的動作尺度(FMS)に従い、4.完全自立、3.修正自立、2.監視・口頭指示、1.部分介助、0.全介助または不能の5段階とした。統計学的検討では、SPSS 12.0を用いステップワイズ重回帰分析を行い、有意確率は5%未満とした。

【結果】術後3週目の歩行能力の予測に有意な因子はJSS-H、健側大腿四頭筋筋力、年齢が順に抽出され、得られたモデル式の調整済みR2値は0.533であった。標準偏回帰係数は、JSS-Hが-0.381、健側大腿四頭筋筋力が0.353、年齢が-0.220となった。JSS-Hの下位項目をみると3週目の歩行非自立群では特に図形構成、考えの切り替えで減点が認められた。

【考察】JSS-Hは脳損傷者用に開発された知的機能評価であるが、今回の研究から大腿骨頸部骨折術後の歩行能力を予測する評価として有用であることがわかった。知的機能の評価法としてはHDS-Rが広く用いられているが、歩行非自立群では、図形構成や考えの切り替えといったHDS-Rには含まれていない評価項目で減点が認められ、JSS-Hが歩行能力に必要な知的能力をより適切に評価できる評価方法であることが推測される。術後早期に年齢や筋力などの身体機能の評価にJSS-Hの評価を加えることで短期的な歩行能力を予測する精度が高くなり、より適切な理学療法プログラムを立案することができるようになると考えられた。

【まとめ】大腿骨頸部骨折受傷者の術後3週目の歩行予後を予測するのに有用な初期評価項目の検討を行ったところ、JSS-H、健側大腿四頭筋筋力、年齢が有意な因子として順に抽出された。JSS-Hは歩行能力の獲得に必要な知的能力をより適切に評価できる方法であり、短期的な歩行能力を予測するために有用な術後早期の評価項目になることが示唆された。
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© 2008 日本理学療法士協会
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