抄録
【目的】当院では、大腿骨頚部骨折(転子部を含む)術後の症例に対して、一般的な訓練に加え、作成した足踏み訓練機を使用し、早期より積極的に足踏み訓練を実施している。今回は、足踏み訓練の実際を訓練機の紹介と共に報告する。また、足踏み訓練を行った症例における片脚起立時間と歩行能力の変化についても報告する。
【足踏み訓練機】第41回本学術大会に報告した足踏み測定器と同様、フットセンサー、A/D変換器、PC等で構成され、ソフトウエアを訓練用に変更した。フットセンサーから入力された訓練中の足踏みデ-タは、連続的、且つ10秒毎に処理、更新され、PCのモニターに表示される。表示内容は、経過時間、歩数、左右の足踏み状態、足踏みのグラフである。足踏み状態は、10秒間の片脚起立時間の平均値が、0秒から0.4秒未満が「悪い」、0.4秒から0.7秒未満が「やや良い」、0.7秒以上が「良い」のコメントが表示される。なお、0.4秒、0.7秒の値は、第41回本学術大会に報告した、片脚起立時間と歩行能力の関係における境界値を参考にした。
【足踏み訓練】訓練機の左右のフットセンサーにそれぞれ足をのせ、その場でゆっくりと足踏みをするよう指示する。前方に固定型歩行器、後方に椅子を設置し、上肢支持の必要があれば、歩行器の手すりを使用した。能力に応じて足踏み条件を変更し、上肢支持なしの足踏みを目標とした。訓練は、前方のPCモニターで、足踏み状態を確認しながら「良い」が表示されることを目標に実施するよう説明した。運動量は能力に応じて、時間及びセット数で示した。
【対象】大腿骨頚部骨折に対して内固定またはBHPを行った症例のうち、受傷前に独歩可能であった16例(男性1例、女性15例、平均年齢81.4±4.1歳、足踏み訓練実施)を対象とした。
【方法】16例に対して足踏み測定(後述)を、測定が可能となった時点(以下、初回)、初回から2週後と4週後の3回実施した。また、各測定時の歩行状況について、歩行補助具や院内での自立度等を記録した。
【足踏み測定】第41回本学術大会に報告した方法で足踏み測定器を使用し、30秒間に20~25歩の足踏みにおける左右の片脚起立時間及び両脚起立時間の平均値を測定した。
【結果および考察】歩行能力と最も強い相関を示したのは、患側片脚起立時間であり、16例の平均値は、初回が0.31±0.09秒、2週後が0.45±0.08秒、4週後が0.58±0.06秒と有意に延長した。2週後11例は患側片脚起立時間が0.4秒以上となり、歩行器または杖歩行が可能となった、4週後は全例で患側片脚起立時間が0.4秒以上となり、杖歩行が院内自立した。全例で患側片脚起立時間は訓練期間と共に延長し、歩行能力も向上した。足踏み訓練機を使用し、モニターで自分の足踏み状況を確認しながらの訓練は、訓練意欲の向上と患側への体重負荷を促し、歩行能力改善にも効果があるものと考える。