抄録
【目的】当院では慢性スポーツ障害膝に対し、明らかなmalalignmentを有する症例は、適応を十分に検討した上で運動療法と併用してインソールを作成することにより良好な成績を得ている。今回、スポーツ復帰するまで追跡できた症例に対して、インソールの早期作成がスポーツ復帰期間において有効か否か検討したので報告する。
【方法】平成14年5月より18年12月までに当院で扱った膝関節スポーツ障害141例のうち、malalignmentを有した50例60膝(男性37例、女性13例、平均年齢16.1歳)を対象とした。これらを筋の柔軟性改善のみで改善した群(以下N群)28膝、3週未満にインソールを併用した群(以下E群)21膝、3週以降にインソールを併用した群(以下L群)11膝に分類した。検討項目としては、1.年齢2.スポーツ種目3.症状発現から当院を受診するまでの期間4.疾患名5.malalignmentのタイプ6.スポーツ復帰期間について調査した。統計学的処理には一元配置の分散分析を用いた。
【結果】1.年齢は3群間で有意差はなかった。2.スポーツ種目は3群間で特異性は認めなかった。3.症状発現から当院を受診するまでの期間は3群間で有意差を認めなかった。4.疾患名は、膝蓋靭帯炎はN群5膝、E群0膝、L群1膝、AKPはN群10膝、E群8膝、L群4膝、鵞足炎はN群9膝、E群10膝、L群2膝、腸脛靭帯炎はN群2膝、E群3膝、L群2膝、有痛性分裂膝蓋骨はN群2膝、E群1膝、L群1膝であり、膝蓋靱帯炎はN群に多い傾向であった。5.malalignmentのタイプは程度の差はあるものの、knee-in&toe-outがN群21例、E群14例、L群8例に、knee- out &toe- in はN群1例、E群3例、L群2例に、lateral thrustはN群1例、E群、L群0例に認め、全体としてknee-in&toe-outが多かった。6.スポーツ復帰期間は、N群5.9±3.7w、E群5.4±3.8w、L群8.8±3.2wであり、N群とE群では差はなかったが、N群E群はL群に比べスポーツ復帰が有意に早かった(p<0.05)。
【考察】我々はインソールの作成基準として、明らかなmalalignmentと症状の整合性があること、筋の柔軟性改善によっても症状が残存することを基本に行っている。しかし早期に復帰を望む例や通院が難しい例、またmalalignmentと疼痛との関連が明らかな例では早期にインソール作成を行っており、今回のE群はこれに該当する。今回の結果から、柔軟性の改善のみでスポーツ復帰が可能であったN群と遜色ない成績がE群で得られており、早期スポーツ復帰においてインソールは有効に作用すると考えられた。インソールの調整にはやや熟練を要するが、早期スポーツ復帰を望む症例などに対し、患者との協議のもと適応を吟味したうえで、早期インソールの作成は有効である。