抄録
【はじめに】
両股関節離断では、歩行能力が実用的でないと判断され、義足に関しては車いすを用いて外出する際の装飾的な機能を目的とし、歩行機能の再建をゴールとしない場合が多い。しかし個々の症例ごとに本人の希望や可能性を検討し、歩行獲得を目的とした股義足歩行訓練を行い、場合によっては、義足の調整・訓練を継続的に行うことが必要な場合もある。今回、入院中に両松葉杖での股義足歩行が監視で可能となり、外来通院にて実用的な股義足歩行を獲得した症例の理学療法を経験したので報告する。
【症例】
30歳、男性。2005年3月急性大動脈解離後、下肢阻血症状が悪化したため両股関節離断術が施行された。安静期間を経て、2005年5月より約2ヶ月間、全身調整を目的とした理学療法が施行されたのち、2005年8月リハビリ目的にて当院転院となった。
【経過】
転院時、切断から4ヶ月経過し、寝返りは中等度の介助を要し、その他のADLは全介助であった。当院にて訓練開始2ヵ月後、車いすADLが自立した。また同時期に義足訓練を平行棒内起立より開始した。訓練開始4ヵ月後の退院時には、両松葉杖を使用した平地での大振り歩行が監視下で行えるようになり、階段昇降も軽介助にて可能となった。しかし退院後、自宅では車いすでの移動が中心であったため、義足の使用が十分に行えず、さらに退院時は、家屋改修中であったため、車いすでの活動範囲が狭くなり、体重が増加した。その結果、義足が適合しなくなり、使用していない期間があったが、本人の起立・歩行への希望があり、2007年3月末、本義足を作成した。本義足は、ソケットはカナディアン式、股継手は単軸(伸展補助装置内臓)、膝継手は固定膝、足部はSACH足にて作成した。義足長は、訓練開始時、症例の切断前の身長が180cmだったのに対し、身長150cmと重心を下げた状態であったが、本義足では、退院時の仮義足同様、固定膝を取り付け、切断前の身長に近い170cmとした。2007年4月より当院にて週1回、外来での義足訓練を開始した。約2ヶ月間の外来訓練を施行し、平地での大振り歩行が自立し、また階段昇降も手すりを使用し自立した。
【考察およびまとめ】
退院時、義足の使用が十分に行えなかった理由として、環境要因だけでなく、装着を面倒に感じる、起立時の転倒への不安、などの心理的要因も考えられた。そこで本義足作製後、自宅でも義足が使用されるように、まずベッド上での義足装着訓練、そしてベッドおよび車いすからの起立訓練などを重点的に行った。さらに歩行訓練では、平地歩行のみでなく、スロープ歩行、段差昇降など応用歩行訓練も行った。その結果、約2ヶ月間の外来訓練において、実用的な股義足歩行を獲得した。両股関節離断の症例においても、患者の希望やその能力に応じて、歩行獲得を目的とした股義足歩行訓練を行うことは有益であると考える。