抄録
【はじめに】
上肢の中間関節である肘関節は、リーチ調節により各種動作を可能にする。肘関節障害により様々なADL障害が発生するが、特に関節リウマチ(以下RA)は、多関節疾患であるため動作障害が著しい。そこで今回、RA肘関節障害に対する人工肘関節(以下TEA)施行例の、術前後におけるADL障害、改善点を検討し報告する。
【症例】
RA肘関節障害を呈し、当院にてTEA施行された10例(男性1名、女性9名) 右4例、左6例。RA発症年齢40.9±19.8歳、RA発症からTEA施行まで20.2±13.6年、手術時年齢60.4±12.2歳、術後4.30±3.80年、肘関節以外の障害を有する症例9例 (手指9例、手関節9例、肩関節7例)
【方法】
疼痛(横浜市大、RA肘関節疼痛評価法)
関節可動域(屈曲、伸展、回内、回外、伸展不全)
日本整形外科学会肘機能評価表(以下JOA-Sの疼痛・機能・可動域の項目を用い、80点満点で評価)
ADL(日本リウマチ学会薬効検定委員会、上肢の動作)
以上4項目を術前後において、対応のあるt検定を用いて比較
【術式】
機種:Kudo elbow type5
進入路:Campbellのposterior approach
セメント:セメント使用2例、セメントレス8例
【術後経過】
術後シーネ固定。手指可動域訓練、患肢挙上。2週で抜糸、CPM、自動運動開始。3週で夜間のみシーネ固定、他動運動開始。4週でシーネ完全除去。
【結果(術前/術後)】
肘関節可動域:自動43.9~116.7/46.7~135.0他動33.9~120.6/32.2~136.1前腕可動域:回内58.9/68.3回外54.4/70.0伸展不全:8.9/10.0疼痛:15.0/34.4 JOA-S:40.0/58.9 ADL:10.4/9.1
伸展可動域、伸展不全、ADL以外は有意に改善した。
【考察】
今回、RA肘関節障害を呈した症例におけるTEA施行後の検討を行った。TEAの目的は除痛、可動域や安定性の回復である。疼痛は全症例改善したが、伸展可動域と伸展不全は改善しなかった。工藤は術後の伸展制限は20~30°までとしているが、当院はそれに達していない現状である。
術前のADLと比較し、生きる基本となる食事動作等、肘関節可動域制限由来の障害は改善したが、他関節複合障害、特に肩関節障害を有する例では、前額面の動作は良いが、伸展・回旋を伴う動作は困難である。このように上肢多関節障害を伴う例には、選択的手術のタイミングが必要とされる。村澤は、手指機能確保優先のため、手関節→手指→肘関節→肩関節の順での手術が理想的としている。また、術前後のPTアプローチ及びスプリント利用等の再考慮、継続的な運動療法、ADL訓練・指導が必要であると思われる。
今回は肘関節障害に限局したが、今後肩を含めた手関節、手指の検討が必要であると考えられた。