抄録
【目的】加齢に伴い憎悪する膝関節の慢性的な疼痛は、生活機能低下に直結する問題である。我々は中高齢者の慢性的な膝痛改善を目的として理学療法を応用したヘルスケアサービスを実施するためのシステム構築を試み、これまで疼痛や運動機能の改善を報告した。しかしながらこのような運動介入が関節軟骨に影響を与えるかは明らかではなく、軟骨の簡便な評価方法が求められる。本研究では、超音波法を用いた軟骨評価方法を検討し、その評価方法を用いて運動介入前後の軟骨の変化を捉えることが可能か試みることを目的とした。
【方法】1)対象:札幌市及び近郊在住の55-75歳の女性で、膝関節に慢性的な疼痛又は不安感を訴えるものとした。参加応募者の中から除外基準[(1)日本整形外科学会膝疾患治療成績判定基準(JOA-S)が65点以下、(2)急性的に疼痛が憎悪し3週間以内に病院を受診した症例、(3)疼痛や拘縮のために横座り又は胡坐が不可能である、(4)膝痛以外に疾患を有する]適応外の者を一次抽出した。さらに 本研究固有の調査票への回答値から層化割り付けして対照群と介入群に分類し、介入群を対象に測定を行なった。対象者は、事前に倫理委員会の承認を得た研究計画書に基づいて十分な説明を受けた後、同意書に署名した。2)測定方法と分析:軟骨の撮影には、Bモード超音波診断装置(TOSHIBA社製、Famio 5)および超音波画像ファイリングシステム(SSB社製、Ultrasound Diver)を用いた。測定肢位は膝関節120-130度屈曲位とした。測定部位を膝蓋骨上縁の近位部として、8 MHz のリニアプローブを用いて大腿骨顆の短軸像を撮影した。得られた軟骨画像から、grade0:normal、grade1:軟骨表層の輝度変化、grade2:軟骨の透明度の減少、grade3:軟骨厚の減少、grade4:軟骨の完全欠損または軟骨下骨面の輝度変化と規定し、grade判定を行った。3)介入プログラム:介入は1回当り約90分、週に2回の頻度で12週間実施した。プログラムは、ストレッチング、固定自転車による有酸素運動、非荷重位での運動を中心とした筋力強化運動、不安定パッドやボールによるスタビライゼーションで構成した。
【結果】運動介入前後で、gradeが変化するものがあり、介入前には正常軟骨に特徴的な透明度が減少しておりgrade2と判定されたが、介入後には透明度が正常軟骨に近づきgrade1と判定される例、軟骨厚の変化が認められる例があった。
【考察・まとめ】超音波法により軟骨のgrade判定が可能であり、超音波法を用いて運動介入前後の軟骨の状態変化を追跡できる可能性が示唆された。