理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 160
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骨・関節系理学療法
高齢者におけるバランスパッドを用いたエクササイズの効果の検証
出口 直樹岩本 久生金澤 浩吉田 和代島 俊也亀井 聡美千原 知美白川 泰山浦辺 幸夫
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抄録
【目的】高齢者ではバランス能力の低下が転倒リスクを高めるため、バランス能力の向上は重要である。バランス能力の改善にバランスエクササイズ(以下Ex)の有効性を示す報告は散見されるが、Exの種類は多様で、どのようなExがバランス能力の向上に効果があるかは明らかではない。今回はバランスパッド(Discosit、Gymnic社)を用いたExを行い、その効果としてFunctional reach(FR)、Timed up and go test(TUG)、開眼片脚起立時間(片脚起立)に改善がみられるかを検討した。
【方法】対象は、当院に通院している70歳以上(平均年齢81.6±5.4歳)の整形外科疾患を有する高齢者58名(男性5名、女性53名)で、全員屋外歩行が可能だった。疾患別では変形性膝関節症と大腿骨頸部骨折術後が66%であった。対象を、Ex群27名と非Ex群31名に分けた。 Ex群は、週に2回4週間、理学療法士の指導のもと、バランスパッドを用いたExを実施した。バランスパッドは、分厚いゴム素材で弾力性があり荷重が大きい方に傾く。Exは1)立位を1分間保つ、2)安静立位から2~3秒かけて膝関節の屈伸を20回行う、3)安静立位から爪先と踵に交互に体重を移動する、4)足踏みを行い左右へ重心を移動する、の4項目で、1)→2)→1)→3)→4)→1)の6行程を各項目1分とし7分以内に完了するものとした。バランス能力の評価はFR、TUG、左右の片脚起立で行った。Ex前とEx開始から4週間後に評価を行い、両群のFR、TUG、片脚起立の改善率を比較した。また、Ex群における各評価項目のEx前の値と改善率との関係を調べた。本研究は、医療法人エム・エム会マッターホルン病院倫理委員会の承認を得て行った。
【結果】非Ex群に比べEx群でFRおよび片脚起立の改善率が大きかった(p<0.01)が、TUGでは有意な差を認めなかった。Ex前のFR、TUG、片脚起立の値と改善率の相関ではFRで有意な負の相関を認めた(r=-0.50、p<0.01)が、TUGや片脚起立では相関は認めなかった。
【考察】静的姿勢で実施されるFRと片脚起立は主に足関節を介してバランスを保持、調整し(藤澤、2005)、高齢者では足関節の機能が低下してバランスの制御が困難となることが報告されている(Morgenthal et al、2001)。今回、FRと片脚起立の改善率が大きかったのは、Exによって足関節の機能が向上したためだと考えた。また、片脚起立はEx前の値に関わらず改善率は一定であったが、FRはEx前の値が小さいほど改善率が高かったことから、FRの方が足関節の機能の改善をより反映するのではないかと考えた。
【まとめ】バランスパッドを用いた4週間のExでは、FRと片脚起立の改善が大きく、Ex前のFRの値が小さいほど改善率が大きかった。
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© 2008 日本理学療法士協会
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